【記者解説】目立つ「分からない」回答…安保「大転換」沖縄の市町村長の考えとは


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与那国町内の公道を走行する16式機動戦闘車=2022年11月、与那国町与那国(小川昌宏撮影)

 琉球新報が実施した防衛体制に関する首長アンケートでは、防衛力を強化する政府方針について支持が不支持を上回る一方、敵基地攻撃能力の保有については反対意見がわずかに多く、安全保障政策の大転換が十分に支持されているとは言えない状況が浮き彫りになった。各質問で「分からない・無回答」や「どちらとも言えない」を選んだ首長も多く、明確に賛否を示すことに消極的な姿勢も目立った。一方、大半の首長が外交努力の必要性に言及しており、識者は「より強い一致した声にする必要がある」と指摘する。

 本紙が実施した防衛体制に関する首長アンケートでは、防衛力強化方針について支持が不支持を上回った。半面、他国のミサイル発射基地などを攻撃する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有については、否定的な見解を示す首長がわずかに多い結果となった。これらの質問に賛否が分かれたこととは対照的に、敵基地攻撃能力を有するミサイル部隊の配備について、「受け入れる」と回答した首長はゼロだった。戦後から続く過重な基地負担を背景に、自治体の長としてさらなる負担増を懸念する姿が浮かぶ。

 一方、約半数の首長は多くの質問で、「どちらとも言えない」や「分からない・無回答」を選んだ。安全保障の在り方について理解が広がっていない現状を反映していると言える。「国で決められたことに対して、コメントは差し控えさせていただきたい」(中村正人うるま市長)や「国防に関して言える立場にない」(徳元次人豊見城市長)との意見が出るなど、賛否を示すことに消極的な姿勢もみられた。

 防衛政策の方向性は政府が決めるが、政策によってもたらされる結果はそれぞれの自治体で暮らす住民に大きな影響を及ぼす。盛んに主張されている「台湾有事」のリスクについては冷静に見極める必要があるものの、沖縄は地理的な条件から万一の事態には「最前線」とされかねない。県民にとって防衛政策の転換は生活に直結する。首長が国の防衛政策に対してどのような意見を持っているかは大きな関心事と言える。

 アンケートでは、31人の首長が対話や外交努力による解決を求めた。政府が防衛費強化の財源の一部を増税で賄う方針を示していることへ反対する回答もあった。戦後の安保政策の「大転換」に当たり、政府は拙速に陥らぬよう国民に丁寧な説明を尽くすことが求められる。住民に最も近い自治体の首長には、地域への影響を最小限にするために主体的に議論に関わる必要がある。

(吉田健一)