戦争の記録、沖縄に託す 「故郷の人に見てほしい」 石川文洋さん、全ネガ寄贈へ


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石川文洋氏の作品・防空壕に逃げ遅れて傷ついた母親を前に悲しむ子どもたち=1966年、ベトナム(石川文洋氏提供)

 那覇市生まれの報道写真家、石川文洋さん(84)=長野県=が、1965年以降の約60年間に撮影した写真のネガフィルム全てを県に寄贈する意向を示している。ベトナム戦争や復帰前後からの沖縄、アフガニスタンなど世界各地で撮影した写真を15項目に分類して県に示し、担当者らと相談を重ねている。

 石川さんは「生まれ故郷の沖縄で多くの人に見てもらえれば、カメラマンとして本望だ」と話している。

 ネガはベトナム戦争を取材するため65~68年に現地に滞在した際、撮影したモノクロフィルムだけでも1万5千枚を超えるという。総数は不明。現在は自宅で保管しているという。

復帰の日の特設授業。上田小学校の児童たちの討論会。復帰しても基地も米軍も残る。米兵に殺されても米兵は無罪なので沖縄人はかわいそうという子どもたちの声は、現在に結びついている=1972年5月15日、豊見城村(石川文洋氏提供)

 「ベトナム戦争」「沖縄」「琉球舞踊」「カンボジア」「アフガニスタンの1カ月」など15項目に分類。「沖縄」の項目には1969年に嘉手納基地を離陸するB52爆撃機や69年2月4日のゼネスト、72年の復帰前後の様子などを撮影した写真が含まれる。デジタル化や、後に写真集にすることも想定しているという。

 石川さんは「沖縄以外の写真も多いが、戦争はどこも同じだ。政治家が起こすものだが、子どもや民間人が犠牲になる。沖縄戦を経験し、ベトナム戦争と深い関わりのある沖縄で多くの人に見てもらえるといい」と話した。 (宮城隆尋)

石川文洋さん