沖縄の観光業、人流回復で新たな課題 人手不足や融資返済で企業に苦境も きょう県内コロナ初確認3年


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
観光客ら人流回復の兆しが見られる国際通り=13日午後、那覇市(ジャン松元撮影)

 新型コロナウイルスの感染が県内で初めて確認されてから14日で3年となる。県経済は観光業を中心に甚大な被害を受けたが、人流回復に伴い持ち直しの動きを見せている。一方で、需要回復により顕在化した人手不足やコロナ禍を乗り切るために受けた融資の返済が始まるなど、新たな課題も浮き彫りとなっている。

 沖縄への入域観光客数は、2019年に初めて1千万人を突破した。20年も引き続き期待が高まったが、新型コロナの流行が全国で拡大。同年4月の緊急事態宣言発令によって需要が一気に冷え込んだ。20年の合計は前年比63.2%(642万7300人)減の373万6600人に急落。21年も前年をさらに下回る301万6700人となり、復帰後初めて外国人客がゼロとなった。

 コロナ禍3年目の22年からは、政府の方針などによって感染対策と社会経済活動の両立が進んだ。全国旅行支援もあって、国内客の10~12月は19年を上回る水準となった。20年3月に運休した国際線も10月以降から本格再開し、さらなる回復も予想される。

 基幹産業・観光の落ち込みは雇用にも悪影響を及ぼした。20年5月以降は有効求人倍率(就業地別、季節調整値)が1倍を下回った。ただ、21年9月末の緊急事態宣言の解除などによって改善基調へ切り替わり、22年は入域客増加の影響で求人が増え、7月には27カ月ぶりに1倍を超えた。

 急激な需要回復で人手不足感が各産業で見られ、賃上げや労働環境の改善で人手を確保しようとする企業の動きも活発化している。

 コロナ禍にあえぐ中小企業を支援するため、政府は実質無担保・無利子の「ゼロゼロ融資」などの施策を展開した。施策が奏功し20~22年の県内企業倒産件数は調査会社で差はあるものの30件前後にとどまる。

 そうした中、ゼロゼロ融資の返済が23年に本格化するため、物価や電気料金の高騰にあえぐ県内中小企業がさらに苦境に立たされる可能性が高まっている。

 県信用保証協会によると、23年1月現在の同融資に関する保証債務残高は1万755件、1619億9500万円に上る。返済は5月までは数十件程度の水準だが、6月には622件と急増。7月にピークを迎え、807件、111億7700万円の返済が始まるという。同協会は件数の急増に伴い返済に窮する事業者の増加も予想しており、経営支援など取り組みを強化することにしている。
 (小波津智也)