5類移行で医療逼迫も 関係者ら再拡大防止へ向け対策訴え 沖縄コロナ初確認3年


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 新型コロナウイルスの感染者が県内で初めて確認されてから14日で3年となった。県民54万人以上が感染し、小児を含む894人が亡くなり、県内医療機関は「医療崩壊」を経験した。コロナ施策が大きく変わろうとしている中、行政支援の縮小で医療が行き届かなくなることも懸念される。何を優先し、誰を守るか。模索が続いている。

 コロナ禍の3年間、県対策本部は感染者の入院調整やクラスター(感染者集団)が確認された社会福祉施設を支援してきた。新型コロナの感染法上の位置付けが5類に移行されれば、今後はこうした行政の政策が段階的に縮小していく。

 急性期病院や社会福祉施設支援、在宅医療の現場でコロナ患者を見てきた新屋洋平医師(西崎病院)は「大流行が起きれば、病院によっては自施設の医療を守るために入院患者を受け入れない場合も想定される」と指摘し、流行再拡大を防ぐためにも感染対策の維持を求めている。

 コロナ患者に対応する病院や福祉施設には国から補助金が出ている。こうした支援がなくなると、医療逼迫(ひっぱく)を回避していた施設内療養も難しくなり、病院に入院を頼む高齢者施設などが増えるとみられる。

 一方、病院では、一般医療でも慢性的な病床不足が続く中、コロナ関連の補助金がなくなれば、院内クラスターなどに対応する病床確保も難しくなるため、施設からの重症でない場合や、介護度の高い患者を受け入れるハードルが上がりかねない。

 新屋医師は「病院にアクセスできない人が出た場合、どう支援するかが課題だ」と語る。さらに、入院が難しくなると救急搬送の増加にもつながりやすくなり「交通事故など助かる命が助からない事態も想定される」と、高齢者以外の影響も指摘する。

 社会が一定の感染を想定しながらも社会・経済活動を優先すると、高齢者の死亡数が増える可能性がある。新屋医師は「どちらかを選ぶのは社会が決めること」としながらも、「さまざまな懸念があることを忘れないでほしい」と語った。
 (嘉陽拓也)