海外渡航の回復遅れ 燃料高、円安や検疫が壁 那覇路線時間帯は使いづらく<経済アングル>


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観光客でにぎわう台湾の夜市=7日、台北市

 那覇空港の国際線が本格的に再開して4カ月が経過した。22年12月に海外から沖縄を訪れた訪日客が3万2800人と順調に増加しているのに対し、県内から海外への旅行客数は回復が遅れている。燃料高騰や円安の影響に加え、那覇空港国際線の離発着の時間帯が海外旅行に使いづらいことなどから、本格的な海外渡航の回復にはさらに時間を要するとみられる。

費用高額に

 ウクライナ情勢などの影響で、燃料の高騰分の負担を旅客に転嫁する制度燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ料金)が高騰している。県内の各旅行社によると、コロナ前の2019年と比較し4~5倍になっており、北米渡航時は10万円を超えているという。

 ジャンボツアーズ(那覇市)の担当者は「全国旅行支援があるため、今は国内旅行という風潮がある」と話し、見通しについて「生活に直結している商品の値上げが顕著な中で、旅行に目が行くか分からない」と分析した。

 沖縄ツーリスト(OTS、那覇市)では、方面にもよるがツアー料金はコロナ前と比較し2~3割高くなっている。担当者は、観光での利用は多くないとして「海外での見本市(フェア)など、ビジネスの需要が多い。娘や孫の顔を見に行く方もいる」と話した。

 国際旅行社(那覇市)法人営業部の嶺井久美課長も「今は帰国や、学生の短期留学の需要が主だ」と話した。

複雑な水際対策

 各国の水際対策や検疫システムなどが複雑で分かりにくいとして、旅行社は問い合わせの対応に追われている。OTSの担当者は「質問がある度に調べ直し最新の情報を伝えるようにしているが、それでも予約してもらえないことも多い」と肩を落とした。

 ジャンボツアーズでは、ツアー旅行で個別の時間を設けられないため、ワクチン3回接種を終えていない人にはツアーの案内をしていない。

人手不足

 現在、那覇空港国際線に就航する各航空会社は、1日1往復のみを運航し、夕方以降の離発着はない。沖縄からの海外旅行には使いづらい時間帯の便が多いが、航空会社によると、スタッフの人手が足りないため増便ができないという。

 香港航空の陳源日本支社長は「沖縄から香港に行く人はほぼビジネス需要だ。スタッフ不足でしばらく増便は厳しい」と話した。

 OTSの担当者は「那覇から台湾を経由してベトナムなどに行くと、今は朝の便しかないので、乗り継ぎの台湾での1泊を強いられるなど、不便がある」と話した。 (與那覇智早)