再生可能エネルギー 自治体主導の政策検討を 真喜屋美樹(沖縄持続的発展研究所所長)<女性たち発・うちなー語らな>


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 2月も下旬、湿気を含んだ南風に、うりずんの季節の到来を感じる。輝きを増した日差しの中で、寒緋桜が咲き始めたころに氷のつぶてが舞っていたことを忘れていたが、先ごろ届いた電気料金の請求書に1月の震える寒さを思い出した。

 ロシアのウクライナ侵攻という国際情勢の影響もあり、沖縄電力は去年11月、燃料費高騰を理由に電気料金の値上げを経済産業省に申請したと発表した。認可されると標準的な家庭の電気料金は、政府による一時的な負担緩和策を除くと、1カ月当たり1万2320円になるという。
 化石燃料に変わる脱炭素時代の主力電源として期待されているのが、太陽光や風力、バイオマスなどを用いた再生可能エネルギー、いわゆる再エネだ。エネルギー政策は国が担うもので、自治体に政策の必要はないように思われてきた。しかし、欧米では自治体が自らエネルギー事業を手がけるなど、国とは異なる独自のエネルギー政策を行うことは珍しくない。
 日本でも国や電力会社が担ってきたエネルギー事業に、市民レベル、自治体レベルで関わる例が出てきた。北海道グリーンファンドは市民出資型で風力発電事業を運営する。総発電量は年間、一般家庭約6万7千世帯を賄えるという。自治体レベルで再エネ事業に取り組むのが岡山県真庭市である。地場産業の林業で排出される木材ゴミを使ったバイオマス発電を推進し、市庁舎や学校など市内の公共施設に電力を供給しており、売電額は約22億円に達する。
 他方、再エネ施設の導入が地域とあつれきを生むこともある。大規模な太陽光発電であるメガソーラーなど地域経済との連関が弱い大企業の進出や、風力発電設備のための山林伐採、景観破壊という乱開発が課題だ。これに対し、長野県飯田市が設けた再エネ条例が注目されている。条例は、再エネ事業の主体を市民団体や自治体活動団体とする。市民は活動を支援する市と協働し、地域金融機関を巻き込み独自の融資制度を開発し、エネルギー事業をつくり出す。飯田市は自治力で事業を運営し、電力で得た利益を地域に再投資する。
 2020年度の沖縄県の再エネによる電力供給量は全体の6%程度だ。再エネ普及は可能性とともに課題もあり、島嶼(とうしょ)地域である沖縄のエネルギー政策は発展途上であるが、自治体によるエネルギー事業を軌道に乗せることができれば貴重な財源を確保することにもなる。地域の自治力を育てながら地域に利益をもたらす自治体主導の再エネ政策に知恵を絞りたい。