「権力におもねらず、国民のために尽くした記者」西山太吉さん死去、沖縄県内から惜しむ声


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特定秘密保護法案に反対する沖縄集会で対談する西山太吉さん(左)と大田昌秀さん=2013年11月、那覇市久米の県青年会館大ホール

 「権力におもねらず、国民のために取材を尽くした」―。沖縄の施政権返還を巡り、日米政府が国民に隠した密約を暴いた元毎日新聞記者の西山太吉さんが亡くなった。親交があった人々は沖縄に対する熱い思いをもって密約問題の追及を続けた西山さんを惜しんだ。

 密約を裏付ける米公文書を入手し、研究者として返還の内実を明らかにしてきた国際政治学者の我部政明さん(68)は「昭和を生きた人なら、誰もが知る人ではないか。生き証人だった」と語る。

 政府が隠し続けた密約を報道し、裁判で訴え続けた功績に触れ「記録の公開は民主主義の原理で、必要なこと。私たちも未来の人たちも、説明責任の大事さを知るための一つの事例として覚えていかないといけない」と指摘した。

 「閣僚、官僚と堂々と渡り合う姿が印象に残っている」。返還交渉を東京で取材した元琉球新報記者の三木健さん(82)は取材現場で西山さんと行き会うこともあった。「米国は施政権を手放し、逆に基地の自由使用を手に入れる。沖縄返還交渉の本質に切り込んだ報道だった」と評した。「権力におもねらず、国民のために取材を尽くし報道する。記者とは何かを示した人だ」と先輩の死をいたんだ。

 講演に招かれるなどしてたびたび沖縄を訪れた。2014年には名護市辺野古を訪れ、基地建設に抗議する市民と交流。「皆さんの闘いを成功裏に収めることは日本の安全保障政策の間違いを是正する大きなきっかけになる」と激励した。

 沖縄国際大教授の前泊博盛さん(62)は12年に大学に招き、学生を前に講演してもらい、北九州を訪れるなど親交を深めた。元琉球新報記者の前泊さんは「報道と権力の関係について大事な教訓を残した」とも語り、取材で得た情報を広く国民に知らせ共有する大切さを学んだと語った。

 彫刻家の金城実さん(84)は07年、読谷で開いた彫刻展に招いた。その打ち上げで「(沖縄に対する)国のやり方は許せない」と憤った姿が忘れられない。「これからの沖縄をどうすべきか」。酒を酌み交わしながら思いをぶつけ合った。「西山さんの事件は権力と対峙(たいじ)するジャーナリズムの試練だった。沖縄の闘いはこれからも続く。あの世から見守っていてほしい」と冥福を祈りつつ呼びかけた。

(知花亜美、古堅一樹、安里周悟)