恩師の優しさ短歌でしのぶ 「感謝伝えたかった」おりざさん 名桜大文学賞奨励賞


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(左から)屋良朝春さんへの思いをつづった短歌が名桜文学賞奨励賞に選ばれたおりざさん=14日、名護市の琉球新報北部支社/おりざさんが「挿し色」のような存在だったと語る、画家の故・屋良朝春さん=2014年10月、那覇市の琉球新報社

 【名護】元県立高校国語教諭のおりざ(本名・上原稲子)さん=那覇市出身=がこのほど、名桜文学賞の短歌部門で奨励賞を受賞した。作品名は「挿し色」。名護市で絵画教室を主宰していた故・屋良朝春さんの姿を回想し、短歌で「弟子たちの色を愛しむ微笑みの挿し色めきて光るアトリエ」と詠んだ。「包み込むような優しさで長所を伸ばす方だった。元気をもらった名護への感謝を伝えたかった」と短歌に思いを込めた。

 おりざさんは教壇に立ちながら、30代後半の頃に琉球大学大学院で臨床心理を学び、修士論文を書き上げるなど精力的に活動していた。介護していた母親との死別を経験しながらも多忙な業務に追われていた40代の頃、「突然布団から起きられなくなった」。うつ病と診断され、1年間は浦添市の自宅で家族の支えの下、療養した。

 その後、「自然が豊かな場所で働きたい」と希望して2009年に名護高校に赴任した。担任を務めた3年7組の生徒たちが「先生大好き」と声を掛けてくれるたびに、元気が出た。「日々心が癒やされていくのを感じた」

 学期の途中、同僚から「絵画教室に行かないか」と誘われた。具象画家・屋良朝春さんの名護市内の絵画教室に見学に訪れたおりざさんは、いきなり筆を持たされデッサンに挑戦した。「この線はとてもいい。あなたにしか描けない」。屋良さんに声を掛けられ、その日のうち入会した。

 屋良さんは生徒たちの作風などを批判せず、生徒たちにコーヒーを入れてジャズが流れる教室で見守った。「生徒の個性を伸ばし、ワンポイントの『挿し色』で作品を際立たせる助言をしてくれた」(おりざさん)。こうした屋良さんの教室での姿を回想して短歌を詠んだ。おりざさんは「屋良先生を知る人たちが短歌を読んでしのんでくれたら」と話した。
 (松堂秀樹)