行政指導30回超、やんばるの赤土対策めぐり食い違う主張 所有者「対策している。流出はしていない」 沖縄・本部町


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県から赤土流出防止対策の指導を受けた土地=2022年11月21日、本部町崎本部

 【本部】本部町内の数カ所の所有地で赤土流出防止対策を十分に取らず、土砂の投入や積み上げなどをしたとして、名護市の60代男性が沖縄県から30回以上の行政指導を受けていることが2日までに分かった。男性は「できる対策をやっている。赤土の流出はしていない」と主張している。町では漁業などに影響を及ぼす海への赤土流出が以前から課題となっており、町民からは県に実効性のある指導を求める声が上がっていた。

 県赤土等流出防止条例では、千平方メートル以上にわたり「土地の区画形質を変更する行為(事業行為)」をする場合は、県への届け出のほか、流出防止対策が義務付けられている。一方で千平方メートル未満は届け出は不要で、対策は努力義務となっている。男性の所有地は町内の数カ所に点在しており、事業の範囲が千平方メートルを超えているかどうかで、県と男性の間に食い違いがある。

 男性は本紙の取材に、所有地造成のため石材を崖下に投入したことや、別の所有地では畑として活用するため、赤土を使用したことを認めた。一方で、「(対策として)種子の吹き付けなどをやっている。所有地から実際に赤土が流出している証拠が県から示されていないし、流出させるつもりはない」と話す。

 町は少なくとも2017年ごろから地域住民らからの通報を受け、現場を確認。県北部保健所が30回以上行政指導を実施した。千平方メートル以上の事業行為で対策を怠ったとして、指導より重い行政処分(改善命令)を出すこともあった。男性の所有地の土砂が下の畑に流出したこともあり、男性が原状回復をしたという。

 平良武康町長は千平方メートル未満が罰則のない努力義務であることに触れ、「今の条例では対応に限界があるとの指摘もある。面積要件の見直しなど、より強い指導ができるよう条例の改正を含めた議論が必要だ」と語る。町議会は21年、県知事や県議会議長宛てに現行の指導体制の実効性の検証などを求める意見書を可決。町も対策の強化を県に要請している。