【記者解説】一時的に負担緩和も、「特殊事情の脱却」に問われる政策と企業努力 電気料金高騰


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 電気料金の大幅な引き上げを受けた県と内閣府の財政措置は、影響が及ぶ家庭や企業全般を対象にしているため、ほとんどの県民が恩恵に浴し、負担が緩和される意義は大きい。ただ、公費の投入を続けなくては成り立たない料金体系は、健全とは言えない。世界的な燃料費高騰を受けた未曽有の状況ではあるが、沖縄電力をはじめ電力小売り事業者には、支援に依存しないための取り組みが求められる。

 県によると、政府の全国一律の負担軽減策に追加して支援を行っている県外自治体はないという。県や経済界は今年1月、離島が多く本土と電気系統がつながっておらず、大規模な水力発電や原子力発電がないため電源構成が化石燃料に偏重しているといった沖縄の特殊事情を踏まえ、政府にさらなる支援を要請。沖縄振興を担う内閣府と県が協調し「包括的な支援策」(池田竹州副知事)として計104億円の財政措置を取りまとめた。

 政府の負担軽減策は現時点で9月までとなっていて、県が発表した支援も10月以降続くかは不透明だ。政府のガソリン補助金が延長を繰り返しているように、公費による値引き支援は「出口」が難しく、長引けば財政規律の緩みにもつながりかねない。

 沖縄電力が前回値上げを申請し認可された1980年当時も、燃料費の高騰や沖縄の地理的な特性は課題として挙げられた。値上げの影響を抑制する一時的な対処は必要だが、同時に沖縄の特殊事情からの脱却のテコになる政策支援や、沖電の企業努力も問われている。
 (當山幸都)