【深掘り】SNS投稿から「土地規制法」強化議論に発展 自民党内で高まる拡大論 弁護士ら「私権侵害の恐れ」


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自民党本部

 国境離島や米軍、自衛隊基地周辺などの土地取引を規制する「土地利用規制法」を巡り、自民党内で対象拡大を目指す議論が起こっている。伊是名村の無人島・屋那覇島を中国人が購入したとされる件がきっかけだ。具体的な問題は確認されていないが、規制法成立当初からくすぶっていた規制強化に火が付いて議論が先行する。規制法に反対してきた弁護士からは懸念の声が上がった。

国民の権利との関係で措置を「必要な最小限度のもの」にすることを定める政府の基本方針(下線は加筆)

 屋那覇島を巡っては中国人女性が購入を主張する動画をSNSに投稿したことで注目を集めた。国境離島ではなく、土地規制法の対象ではない。自民党の一部からは規制法の適用範囲を拡大すべきという声が上がった。

 土地規制法について、政府は「必要な最小限度」の措置として国境離島や米軍基地・自衛隊施設周辺を対象とした情報収集などを行うと説明してきた。一方、成立当初から私権を制限しかねないことや、立法根拠となる実例がないことなどが問題視されてきた。

 土地規制法対策沖縄弁護団の団長を担う加藤裕弁護士は「もともと問題のある法律だが、さらに内容を広げるのはおかしい。経済活動の自由やプライバシーを侵害する恐れがある」と指摘した。

 一方、自民党内では現行法では対象が限られていることで、実効性が不十分だという不満も残っていた。その結果、屋那覇島の一部土地の取引に関する話題が土地規制法の強化議論に発展した。

 屋那覇島の土地取引を巡っては具体的な問題が生じている訳ではない。防衛省の青木健至報道官は「屋那覇島に防衛関係施設はなく、自衛隊の運用などに支障が生じる事態は、現時点で確認されていない」と語り「土地の売買はあらゆる場所で行われている」との認識も示した。

 国内の土地が外国資本に購入されても日本の国内法が適用されることに変わりはなく、もし不法な行為があれば土地規制法の適用にかかわらず、従来の法律で取り締まりの対象となる。一方、政府関係者は「確かに現時点で問題はないが、目が届かないという離島の特殊性がある」と語った。

 これに対し、土地規制法の問題を指摘してきた仲松正人弁護士は「特定の国を敵視したり、政府が気に入らない人たちを監視したりする空気感がなし崩し的につくられること自体が、戦争する国づくりにつながる」と警鐘を鳴らした。
 (明真南斗)