県敗訴もチルダイせず 辺野古阻止、諦めず 市民ら「非戦へ声を」 沖縄


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判決前の集会であいさつする原告団や支援者ら=16日、那覇市の城岳公園(喜瀬守昭撮影)

 「玉城デニー知事を支え、辺野古新基地建設を止めるまで団結して頑張ろう」。名護市辺野古の新基地建設を巡り、県が国を訴えた訴訟2件は「却下」や「請求棄却」となったが、裁判所で判決を見守っていた市民らには「チルダイ(落胆)」した様子はなく、今後も工事を阻止していく決意を新たにしていた。

 背景にあるのは、県の埋め立て承認撤回を国交相が取り消した裁決に対して、県が取り消しを求めた訴訟が昨年末、最高裁によって「原告資格がない」と棄却されたことにある。16日、判決前に開かれた市民集会では、福岡高裁那覇支部も同様の判決を出す見通しが報告されていた。

 集会を主催したオール沖縄の福元勇司事務局長によると、判決前にこうした見通しが語られるのは異例だが「司法への諦観ではなく、非戦を求める住民運動が正念場にあるからだ」と強調する。

 16日は石垣市で陸上自衛隊駐屯地が開設されるなど、有事を想定した防衛力強化が進んでいる。名護市の新基地建設だけにとどまらない事態に福元事務局長は「沖縄戦の記憶を継ぐ世代として判決に一喜一憂して立ち止まっていられない」と説く。集会に参加した上江田貞子さん(74)も「国や司法が民意を踏みにじるからこそ、私たちがずっと声を上げ続けないといけない」と語った。

 一方で、有識者らには、今回の判決を検証する動きもある。琉球大学の徳田博人教授(行政法)によると、4月には県内で行政法の専門家や弁護士らで判決の問題点を探る講演会を開くほか、6月には日弁連などとともにシンポジウムを企画している。徳田教授は「地方自治、人権、民主主義などの普遍的価値を国家の政策で侵害することは許されない」と、司法の判断を疑問視した。
 (嘉陽拓也)