【記者解説】辺野古判決「入り口論」からは一歩前進 裁判所が踏み込んだその内容とは


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大浦湾に停泊する辺野古新基地建設のためとみられる作業船=2月23日、名護市辺野古

 名護市辺野古の新基地建設を巡り県が国の関与取り消しを求めた2件の訴訟で、16日の福岡高裁那覇支部判決は、そのうち1件で防衛省の設計変更申請を県が不承認とした処分について具体的な判断を示した上で県の訴えを退けた。これまでの県と国の訴訟の判決では、入り口論に終始することが多かったが、今回は踏み込んだ格好だ。

 県の不承認に沖縄防衛局は行政不服審査制度を使って国土交通相に審査請求し、国交相は不承認の取り消し裁決をした上で、承認するよう求める是正の指示を出した。県は不承認処分は正当で、国交相裁決も是正指示もどちらも違法だとして2件の訴訟を起こした。

 埋め立ての要件を満たすかなどの司法判断を求める県に対し、国は中身の議論を避ける姿勢に終始した。是正の指示の訴訟でも、不承認を取り消した国交相裁決が有効で、県は裁決に拘束されるため主張が制限されるなどとして請求棄却を求めた。

 高裁那覇支部は、是正の指示の判決で「県は裁決に拘束されない」と認め、不承認処分の適否を判断。ただ、軟弱地盤の調査が不十分で、環境保全への配慮も足りないなどとする県の主張はことごとく退け、防衛局の設計変更申請は要件を満たすと判示した。

 大浦湾側の埋め立て工事を行うには県の承認が必要で、特に是正の指示が認められるかどうかは今後の工事の行方を大きく左右する。訴えは退けられたものの、中身に踏み込めたのは一歩前進とも言える。県は上訴の方針を示しており、最高裁の判断も注目される。
 (前森智香子)