『気持ちが伝わる! 沖縄語リアルフレーズBOOK』 最強のうちなーぐち教本


社会
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『気持ちが伝わる! 沖縄語リアルフレーズBOOK』比嘉光龍著 研究社・1400円+税

 最強のうちなーぐち教本が現れた。うちなーぐちの初級者から、実践に力を入れたい中級者にとって最適の書である。簡単なあいさつなどの基本はもちろん、喜怒哀楽を表す表現や依頼の仕方、遊びや食事、恋愛の場面で使える表現、ビジネスシーンで使えるフレーズまで網羅されている。

 本書の主な特徴は三つある。一つ目はタイトルの「リアル」という語が示すように、うちなーぐちのネイティブスピーカーが日頃用いるフレーズが学べるという点である。ただの例文集ではなく、男女の会話形式を取り、実際のやり取りが分かる仕様になっている。「コンビニ」「カフェ」などの現代風な単語を交え応用しやすい工夫がされつつも、本場の文法や構文をしっかり守り、本来のうちなーぐちを再現している。著者の比嘉光龍氏が20年にわたり、屋嘉比富子氏(1917年生まれ)の指導の下、うちなーぐちの勉強を重ねてきたたまものといえよう。
 二つ目の特徴は、ダイアログ場面の多様な設定と、関連する簡潔な解説である。文法的特徴や特殊な言い回し、そして年齢・地位の上下関係やジェンダー的特徴が分かるような例文を設定し、必要最低限の説明を加えるという絶妙な配慮がなされている。例えば、ジェンダー的注意が必要な会話は話者同士の間柄(「母・息子」「夫・妻」)が明示されており、ビジネスシーンの会話では、仕事における敬語の具体例も分かり、実生活に応用しやすい。
 三つ目の特徴は、音声のサポートがあることである。研究社ウェブサイトからダウンロードできるため、スマートフォンやパソコンに保存し、繰り返し声に出して練習ができるという大変有り難い特典付きである。また、うちなーぐち学習者が特に注意を要する声門破裂音という喉を詰めるような発音があるが、その違いが分かる例も収録されており、高い学習効果が期待される。
 本書の画期的な試みは、ユネスコが危機言語と認定した他の琉球諸語(奄美語、国頭語、宮古語、八重山語、与那国語)にとっても貴重な手本となるであろう。(新垣友子・沖縄キリスト教学院大学准教授)
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 ふぃじゃ・ばいろん 歌三線者、沖縄語講師。沖縄大学地域研究所特別研究員、沖縄キリスト教学院大学、沖縄国際大学非常勤講師。その他、新聞やテレビ、ラジオなどで活躍中。