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無人島以外も…中国マネーと沖縄の不動産 虫食い状態で「開発困難」の見方も【WEBプレミアム】


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屋那覇島

 中国人の30代女性が沖縄県本島北部の無人島「屋那覇島」を購入したとSNSに投稿し、波紋を呼んでいる。女性が購入した土地は、私有地などが混在しており、「虫食い状態」と指摘されている。女性が関係するとみられ、土地の登記簿上の所有者である東京の中国ビジネスコンサルティング会社のホームページでは、「屋那覇島をリゾート開発していく」としているが、その実行可能性などについて県内不動産関係者に聞いた。


(呉俐君)

かつては「でんぷん工場」も

 そもそも屋那覇島はどんな島か。かつて島には工場もあり、関係者らが住んでいた時期もあった。『伊是名村誌』(1966年)によると、屋那覇島は伊是名島の南方に横わたる周り4・6キロ、面積0・66平方キロの小島だ。  

 戦前、上里順一という人物が本土の事業家と共に、ソテツ会社と称して、ソテツを原料とするでんぷん工場を立ち上げた。それに付随する天水タンクや住宅が設置されていた。しかし米軍の激しい空襲にあい、設備は完全に破壊された。人的被害もあり、工場事業は中止のやむなきに至ったという。  

 また、『字伊是名今昔誌』(1985年)では、「具志川島は1970年に無人島になり、一時無人島だった屋那覇島は、東陽産業が事業を始めたのでその会社関係の人が住んでいた」という記述もある。  

 上記の文献から、戦前だけではなく、戦後にも屋那覇島に人が住んでいた時期があったとうかがえる。

■電気や水もない  

 中国人女性が購入した土地の中には、かつての住民が所有すると見られる私有地などが混在しており、「虫食い状態」。外国人らに県内の不動産売買などを仲介するOK不動産(那覇市)の照屋健吉社長はこう指摘する。さらに島は無人島であるため、現在は電気や水道もない状態だ。    

 登記簿上の所有者である東京の中国ビジネスコンサルティング会社のホームページでは「屋那覇島をリゾート開発していく」としているが、リゾート地に最も重要とされる砂浜の大部分は伊是名村が所有している。  

 照屋氏は「開発には村の協力がなければ、難しい。土地が虫食い状態に加え、電気や水もないのは課題が大きい」と、そもそもの計画の実効性が低いとみる。

■「慎重な投資判断を」 

 沖縄へのリゾート投資などに詳しい県内在住の50代中国人男性は「屋那覇島だけではなく、自分が知っている範囲では名護市や金武町にも中国人が購入している開発不可能な山林地がある」と話す。  

 そもそも、なぜ中国の富裕層はなぜ沖縄の土地を購入するのか。
 男性は「沖縄の自然は豊かで、気候も穏やかで心地いい。中国の投資家に一定の魅力がある」と説明する。そのうえで「中国では個人が土地を所有する権利がないので、所有権がほしい投資家にとって日本などの海外での不動産投資が非常に魅力的だ」と語った。

 男性によると、新型コロナの影響もあり、中国の投資家は出国できず、中国不動産会社の動画紹介だけで、日本国内のリゾート地を購入する事例もあるという。「土地の用途も知らないままで購入したという人もいる」と明かす。  

 男性はかつて、中国の超富裕層を県内各地に案内した経験がある。結局中国と日本両国の開発事情の違いにより、成約に至らなかったというが、男性は「中国では着工しながら、開発許可を申請することができる。日本ではできないが、それを理解できない中国人投資家もいる」と説明する。その上で「今後、沖縄を含め日本国内で投資する場合は、事前に土地の用途を理解した上で、慎重な判断をしてほしい」と呼び掛けた。