見慣れない車が通って…やんばるで相次ぐ猫の遺棄 希少生物への影響懸念 名護・勝山


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遺棄された飼い猫とみられる猫たち=2日、名護市の勝山公民館

 【名護】「最後まで責任を持って」―。名護市の勝山公民館周辺で昨年から飼い猫だったとみられる猫の遺棄が相次いでいる。飢え死にしたとみられる猫もいるといい、勝山区は「困ったらやんばるに捨てればいいという安易な考えでペットを扱わないでほしい」と遺棄しないよう訴えている。

 同区は嘉津宇岳の麓にある。嘉津宇岳は県指定天然記念物のコノハチョウや、「生きた化石」と呼ばれるイボイモリなど貴重な生物が生息するが、勝山区によると嘉津宇岳周辺や勝山区に、見慣れない自家用車が訪れ猫を遺棄していくなどして捨て猫が増えている。

 猫を含む動物の遺棄は、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)違反として、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を処せられる可能性がある。

「動物の遺棄・虐待は犯罪です」のキャッチフレーズが入ったポスターで飼い猫の遺棄を思いとどまるよう呼び掛けている勝山区=名護市の勝山区公民館

 勝山区によると、昨年7月に白い猫が、今年2月に黒い猫が遺棄された。見慣れない乗用車が集落に来て、走り去った後、猫が放置されていたという。人を怖がる様子がないことから飼い猫だったとみられる。過去には餌を自分で探せず飢え死にしたと思われる猫も。カラスが集まり、騒然となったという。

 岸本一郎区長は「やんばるに捨てれば生きながらえると考えているかもしれないが、ペットに対する虐待だ」とため息をつく。「県指定天然記念物のイボイモリなど動きの遅い生き物を補食するかもしれない。責任を持って最後まで飼ってほしい」と話した。

 どうぶつたちの病院沖縄は「やんばるの森では捨てられた飼い犬や飼い猫によるヤンバルクイナの補食などが発生している。ペットの遺棄は野生生物とのあつれきが生じてしまう」と指摘した。
 (松堂秀樹)