児童「会いたい。戻りたい」 里親解除の調査委報告書「児童の悲鳴であふれてる」 沖縄


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調査委は、元里親に会いたいという児童のメッセージが無視され続け、児相には「子どもの権利利益尊重」の視点が一貫して欠如していると指摘している。

 里親委託解除事案を巡って、本紙が情報公開請求で入手した外部有識者による調査委員会報告書(部分開示版)では、児童が元の里親に「何度も会いたい、戻りたいという言葉があった」と記されていた。委員は「子どもの権利利益尊重の視点が一貫して欠如している」と指摘し、児童相談所が「真摯(しんし)に向き合った形跡が経過記録に見られない」と報告している。

 調査委は、元里親に会いたいという児童のメッセージが無視され続け、児相には「子どもの権利利益尊重」の視点が一貫して欠如していると指摘している。

 調査委は、県や児相の対応を児童の視点で検証した。2022年1月、児童が0歳から5年余り生活していた元里親から委託解除され、一時保護所にいる間、児相は知事や県議会などに「(児童は)落ち着いて生活している」との説明を繰り返した。

 一方で調査委は、同所の「行動観察記録」を基に「それ(児相の説明)を否定する本児の悲鳴であふれている」と記述。児童を「そっとしておくべき」と説明する児相の理屈は、「どのような専門的知見から導かれる結論か」と疑問を呈した。

 また、資料に見る児童の訴えは「児相が拾えた声にすぎない」と、多くの声が漏れ落ちている可能性も示唆した。

 22年3月に別の里親に委託された後についても、児童の中には「ずっと心の中に住んでいる里親の存在があり、何度も会いたい、帰りたいとの言葉がある」と説明。丁寧に対応する現場担当者はいたものの、何度も「家に帰る希望はかなわない」と児童に伝達していたという。

 当時5歳の児童が、愛着関係にある身近な人との強制的な別れを強いられ、その経験と向き合う暇もなく人間関係と生活が劇的に変化した過程は「児童の発達過程に影を落としたことは間違いない」と、委託解除の影響を懸念している。
 (嘉陽拓也)


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