里親は病や死別、経済的困窮、虐待など、さまざまな事情で実親と暮らせない子どもたちを受け入れ、家庭環境の中で養育する。里親に登録してから11年目で、現在子どもを養育中の本紙・島袋貞治記者(44)が体験や葛藤を伝える。
スマートフォンが震えた。通話の着信を知らせる画面に「児童相談所」の表示が浮かぶ。子どもを緊急に引き受けられないか―との打診だった。
里親である私たち夫婦はいざ連絡を受けると、「片付けだ」「食事はどうする」「仕事の都合は」と備えに走った。心の準備はしているつもりだったが、やはり慌ただしくなった。私たちに実子はいない。子育ての経験がないまま、連絡は突然だった。「どんな子だろうか」と緊張も高まった。
里親制度は社会的養護の一つ。社会的養護とは、親の事情などで家族と暮らすのが困難な子どもを対象に、社会が公的責任で養育する。児童養護施設も社会的養護。施設では集団で暮らす。これに対して里親制度では、一般住宅で里親と実の家族のように寝食を共にして過ごす。
私たちが里親に登録したのは2011年。1日限りもいれば、数週間や年単位などの期間、子どもたちがわが家で過ごした。
連絡を受けた日に迎える場合もあれば、事前に子どもと面談する「ならし」の期間を経てから迎える場合もあった。
里親を始めた当初、子どもの身支度品は自宅になかった。最初は不安も覚えたが、ほぼ杞憂(きゆう)にすぎなかった。担当職員が衣類などの身支度品や抱っこひも、ベビーカー、チャイルドシートなど当面の品も同時に届けてくれたので、ひとまず安心した。
定額の生活費が公費から支給される。その中からやりくりし、おむつやミルクなどの消耗品を購入する。既往歴やアレルギーなど、受託する子どもに対して注意する点も伝えられた。急きょ病院に行くことも想定し、病院の受診券も渡された。
(島袋貞治)
>>託された命抱きしめ考える 「子の一番の幸せ」とは・・・ に続く
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