託された命抱きしめ考える 「子の一番の幸せ」とは・・・<記者、里親になる>1続


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眠る子どもとお気に入りのぬいぐるみ

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 報道という仕事柄、いざ事件事故などが起きれば、勤務時間は不規則になりがちだ。児童相談所から受け入れを依頼されたある子の場合、妻だけで迎え入れ、私は深夜に帰宅してから初対面となった。抱えると、腕の中ですやすやと寝てくれた。

 出社時は夫婦だけだった景色に、帰宅すると子どもが加わっている。初対面の子どもは泣き顔だったり、笑顔だったり。そんな場面に遭遇する度、この世界が彩り豊かに変わる感覚になる。その日初めて会った子を腕の中で抱いていると、なぜか涙が出た。託された命。複雑な感情としか言いようがない。妻は笑い、優しく声を掛けてくれた。

 里子と里親が一緒に生活していく上で、児童相談所を含めた関係機関などは「愛着形成」を重視する。里子と里親の間で愛情が育まれ、信頼関係を築く。そうすることで里子の心が安定し、健やかに成長できると期待されているからだ。

 実親の下に戻るのか、それとも里親の下や児童養護施設で暮らし続けるのかは、「子の最善の利益」を最優先に決められる。平たく言えば「子どもにとって一番の幸せ」を念頭に児童相談所は里親家庭での養育方針を決める。

 交流のある里親の事例でも実親に戻ることもあれば、そうでない子もいる。

 子どもにとって一番の幸せは何だろう。私たち夫婦で話題に上るテーマになった。実親の存在を常に意識している。

 幼児の場合、私たち夫婦と川の字で寝る。「落ち着いているかな」「安心できているかな」。そんなことを思いながら寝顔を見詰める。

 半面、想像が巡る。どのような事情で、わが家に来ることになったのか。

 私たちの場合、詳しい理由を知らされる事例はほとんどなかった。
 (島袋貞治)

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 しまぶくろ・さだはる 1977年生まれ、那覇市出身。2001年琉球新報社入社。社会部や中部、南部の各報道部などに配属。北部報道部長、社会部長を経て、21年10月から編成グループ副グループ長。2011年に里親登録、現在子ども1人と妻と暮らす。


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