「会いたい…」実母思い葛藤 母子手帳に面影探す<家族になる 里子・里親の今>1


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ミカさんが小学生の頃に初めて開いた母子手帳。幼い頃の様子がメモされている(提供)

 「あやすと笑った」。色のあせた1通の母子手帳にはそう短い文が記されている。持ち主は本島南部の20代のミカさん(仮名)。手帳の空欄を埋めたであろう実母の顔は分からない。1歳の頃、里親登録をする現在の両親の元へ来た。6歳4カ月で特別養子縁組をし、自立する現在。だが、10代の頃は自分の存在を否定的に捉え、“家族の形”に悩み、葛藤した過去もあった。

 4~5歳の時、当時里親だった現在の母親から、自分が里子であることを伝えられた。幼かったこともあり「へぇ、そうなんだ。実のお母さんはどこにいるんだろう」と漠然と思った記憶がある。

 母子手帳を初めて開いたのは小学生の頃。細かく記された手書きのメモを見つけた。実母にとって自分は望まれていない存在だと悩んだ当時、「生まれること自体は、望まれていたんだ」。彼女が書いたであろう文字に、少し救われた気がした。手帳の記録から、きょうだいがいることも知った。次第に実母や兄、姉に会いたいという気持ちが膨らんでいった。

 小学生の頃、授業で母の日の絵や自分の生まれた日についてまとめる新聞作りがあった。気が進まなかった。周囲の同級生は、生まれた日の様子や名前の由来をまとめ、百日記念の写真を持ち寄った。自分が生まれた日の様子は分からず、手元にあるのは家族の元へ来た1歳の頃からの写真。両親には「もっと小さい頃の写真がいい」と不満をぶつけた。実母の存在が気になるたび、手帳を開いた。
 (吉田早希)

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<用語>特別養子縁組

 さまざまな事情で実親と暮らせない子どもを、自分の子どもとして迎え入れる制度。家庭裁判所の決定により成立し、実親との法的な親子関係は解消される。戸籍表記は育ての親の「長男」「長女」などとなる。実親との法的関係が残る「普通養子縁組」もある。


 10月は「里親月間」。さまざまな事情から親が育てられない子どもを迎え入れる里親家庭の現状と、成長した子どもたちの姿から、子どもの権利を守り、安心して過ごせる環境づくりを考える。

 

>>血のつながりを否定したいから執着した・・・実母捜し大阪まで に続く