被害者家族や弁護士の意見は?「運用慎重に」「大人同様に」 改正少年法施行から1年


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 少年事件を多く手がけ、虐待を受けた子どもたちを受け入れる「子どもシェルターおきなわ」の理事長を務める横江崇弁護士と、自身も犯罪被害者家族で「犯罪被害者支援ひだまりの会okinawa」の河井由美代表と夫で弁護士の耕治さんに聞いた。(聞き手・友寄開)

子どもシェルターおきなわ・横江崇弁護士 犯罪防止へ社会で支援

横江崇弁護士

 ―施行から1年がたった。

 「特定少年を扱う事例が少なく、今後も慎重に推移を見守りたい。改正には反対だった。運用は慎重にあるべきだ」

 ―特定少年は18歳未満と扱いが異なってくる。

 「特定少年の処分を決める際に『犯情の軽重』を考慮することが明記され、少年の要保護性より犯罪行為に重きが置かれるのではないかとの懸念がある。改正後、那覇家裁の関係者が『特定少年であっても、要保護性の調査は従来通り丁寧に実施していく』と話しており、安心した部分もあった。厳罰化したが、非行少年の健全育成という少年法の理念に沿った運用をしていく必要がある」

 ―実名報道もあった。

 「昨年4月に甲府地検は殺人と放火などの罪で起訴された少年の実名を公表した。全国紙や県内紙の報道でも実名と匿名の判断が割れ、興味深かった。実名報道されることで、更正の機会が失われる可能性もあり、慎重に扱うべきだ。加害者を守るためではなく、次の犯罪を生まないために社会がどうあるべきか、ということが重要だ」

 ―非行少年の特徴は。

 「家庭に何らかのトラブルを抱えているケースが多い。軽度の障がいがあり、支援につながらずに放置されている事例もある。近年、新型コロナでトラブルを抱えて引きこもり、発散する場所がなく、抱えきれなくなる事例が増えている。そのような子どもをすぐに刑事事件で扱っていいのか。本人の努力ではどうにもならない事情があり、罪を犯した子どもたちを社会でどのように助けていくのか、という考え方が大切だ」
 (「子どもシェルターおきなわ」理事長)


被害者支援ひだまりの会 河井由美氏・耕治氏 刑事手続き 大人同様に
 

被害者支援ひだまりの会の河井耕治さん(左)と由美さん

 ―1年を振り返って。

 由美代表 あまり変化はない、というところが実感。そもそも、被害者側から見ると加害者が成人なのか、少年なのかは関係がない。命が奪われれば被害者家族は加害者に対して「(被害者と)同じようにしてやりたい」という思いを抱え、厳罰化を望む。少年だけに厳罰化を求めているわけではない

 ―少年法では要保護性を重視して、保護処分を決める。

 由美代表 見方を変えれば罪を犯した少年を守っている。そこを理解して重大な犯罪を犯した少年が「法に守られている」と発言した事例があった。そのような少年が更生し、社会復帰できるとは思えない

 ―改正に反対した声の中に「少年法は機能している」との意見もあった。

 耕治さん 確かに少年犯罪や重大な犯罪は減っているが、同時に少子化も進んでいるので当然だ。2020年に福岡県の商業施設で15歳の少年が面識のない20代女性を刺殺する重大な事件があった。このような悲惨な事件をなくさない限り「機能している」ということにはならないと思う

 ―成人年齢や投票年齢は引き下げられた。

 由美代表 国が18歳以上を成人として認めている以上、犯した犯罪については大人と同じように裁かれることが自然だ

 耕治さん 被害者家族は事件後に、警察の調べや裁判などの対応に追われることになるが、移動費などは自腹。なぜ、事件に巻き込まれ、経済的な負担まで負わないといけないのか。
(犯罪被害者支援支援ひだまりの会okinawa)