「県内移設」重い足かせ 返還予定の8割が条件付き 期日明示は形骸化


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 日米両政府が2013年4月に合意した嘉手納より南の米軍施設・区域の返還・統合計画。5日で合意から10年が経過したが、統合計画で返還予定の約1048ヘクタールのうち8割が県内移設の条件が付いており、重い足かせとなって計画が進んでいない。既に最も早い場合の返還期日を過ぎた施設もあり、当初成果とされた返還期日の明示は形骸化が進んでいる。

 統合計画は12年に民主党から政権を奪還した安倍晋三政権が、沖縄の基地負担軽減策として打ち出した。

 「(返還)時期を明示しなかったら、計画とは呼べないだろう」と安倍首相(当時)自らこだわりを見せたとされ、返還時期の明示を成果として、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府と対立していた仲井真弘多知事(当時)の態度を軟化させたい思惑もあった。

 移設条件なしで返還が合意されたキャンプ瑞慶覧西普天間住宅地区など約65ヘクタールは全て返還が実現している。県内移設の条件が付いた841ヘクタールのうち、先行で返還されたのは8・1ヘクタールにとどまる。移設条件を満たす難しさが浮き彫りとなっている。

 特に普天間飛行場と陸軍貯油施設の一部(第1桑江タンク・ファーム)は「22年度またはその後」とされたが、最短期日は既に過ぎた。両施設とも辺野古沿岸部・大浦湾の埋め立てが条件に関わっており、埋め立ては、軟弱地盤の発覚などにより大幅に遅れているためだ。

 防衛省は統合計画の全項目に着手していると強調する一方、返還期限の見直しについてはいずれも「またはその後」との記述があることから、慎重な姿勢を示している。

 県内移設条件は計画実行を困難にするだけでなく、県内での基地負担固定にもつながる。統合計画は中部に分散した米軍施設を嘉手納以北に機能を集約する内容となっている。米軍にとっては、全体として基地機能を維持したまま、老朽化した施設を新たに日本政府の負担で更新できる側面もある。

 統合計画の実現は中部地域の跡地利用による経済効果を生む可能性があるが、北部地域では新たな施設が造られて将来にわたって基地使用を促すことになりかねない。
 (知念征尚、明真南斗)