新聞記事、声で届けて35年 視覚障がい者向けに音訳ボランティア 浦添市の「はづきの会」


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 視覚障がい者に新聞記事を―。浦添市の音訳ボランティア「はづきの会」は、約30人の会員が毎日代わる代わる新聞を読んで録音し、那覇市松尾の点字図書館に届けている。利用者との交流がほとんどない中で、聞いてくれる誰かのために地道な活動を続けている。

音訳ボランティア用のブースで琉球新報の記事を録音する大城共子さん=3月30日、浦添市仲間の同市社会福祉協議会

 1988年に活動開始し、35年の歴史を持つ。当初は琉球新報の社説と当時あった夕刊のコラム「話の卵」の音訳から始めた。利用者の要望に応え、現在は1面の見出しやコラム「金口木舌」、読者が投稿する「論壇」など、幅が広がっている。

 活動場所は浦添市社会福祉協議会内にある小さなブースだ。毎日1人ずつブースを訪れ、音訳ソフトに録音していく。1週間分を編集しCDに収め、点字図書館に届けるまでがボランティアの役目だ。

 会長の大城共子(ともこ)さん(49)が心がけているのは「感情は入れずに読むこと」。感情は読み手が与えるものではなく、聞き手がつくるものだとの思いからだ。

 名字の「玉城」は「たまき」なのか「たましろ」なのか、PFOSはアルファベットを読むのか「ピーフォス」と読むのか。正しく、分かりやすく伝えるため調べないといけないことも多い。スポーツ記事の見出しで多用される「V」は「ブイ」と読まず、「優勝」と言い換えるなど、聞き手のことを考えて工夫を重ねている。

 大城さんは過去に読者の「声」の欄に利用者の投稿を見つけたことがある。「ボランティアは自分の満足のためだと思っているけれど、利用者の感想を読んだ時はうれしかった」と、目を細める。対面の機会はなくても、ボランティアと利用者は「声」でつながっている。
 (稲福政俊)