飲食店コスト増、人材も流出 半数値上げ、努力限界、原価率倍増、空席でも予約断る


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予約席を準備する居酒屋従業員=6日午後、那覇市久茂地の沖縄料理ちぬまん(又吉康秀撮影)

 県飲食業生活衛生同業組合(鈴木洋一理事長)に加盟する県内飲食店を対象にしたメニューの値上げに関するアンケートでは、離島を含む108店舗の内、約5割が値上げに踏み切っていた。検討中の店舗を含めると約8割に上る。食材費、人件費、固定費というトリプルコスト高騰に、飲食店関係者からは「自助努力も限界だ」との悲鳴が上がる。

 コロナ禍を機に、他業種への転職が増えたことで人材の流出も深刻だ。ホールスタッフや調理担当などが不足している現状に、電気料金の値上げも追い打ちとなった。

 飲食店は過去に例を見ない苦境に、国際通りなどで沖縄料理店を運営する「ちぬまん」グループの沖縄観光開発の与那和正専務は「全国旅行支援やマスクの自由化で観光客は増えているが、スタッフ不足のために席が空いていても予約を断らざるを得ない状況だ」とため息をつく。コロナ以前は400人いた従業員も現在は200人前後と約半分までに減少した。

 従業員の能力に合わせた昇給制度を設け、求人の際に提示する時給額も上げているが、それでも応募者は思うように集まらない。忙しい週末は本社の社員がホールや洗い場に入るなど工夫しているが、根本的な解決には至っていない。「以前は外国人スタッフも多かったが、コロナの影響で一気に辞めてしまった。海外での面接会再開など具体的な対策やサポートが必要だ」と訴える。

 那覇市の市場本通りにあるポーク玉子おにぎり専門店「福助の玉子焼き」は2021年7月に開店した。コロナ禍でのオープンだったが、地元客にも受け入れられ、売り上げは好調だった。だが、卵、ポーク、油の仕入れ値が一度に上がり、原価率は倍近くに。「レストランや居酒屋では卵を使ったメニューを停止している店もあるが、専門店ではそうもいかない」。我謝宗一朗取締役は声を落とす。同店は値上げせずにオープン時と変わらない価格で販売を続けようと、包材を箱からプラスチック容器に変更するなど工夫するが、現場は疲弊している。

 我謝氏は「卵の質を落としたりサイズを小さくしたりすれば常連客が離れてしまう。これ以上コストが上昇するようなら、いずれは価格改定も選択肢に入れざるを得ない」と吐露した。
 (普天間伊織)