沖縄の住宅課題解決目指す ニーズに応え「まちづくり」提案へ 福地組社長 福地一仁氏 <焦点インタビュー>


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創業70年を迎えて今後の展望を語る福地組の福地一仁社長=7日、嘉手納町の同社

 4月に創業70年を迎えた福地組(本社・沖縄県嘉手納町)。戦後復興期に住宅を建設した「大工集団」として生まれ、現在は住宅だけでなく公共施設やマンション、病院などさまざまな建設を手掛ける。2021年に3代目社長に就任した福地一仁(かずひと)氏にこれまでの歩みと今後の戦略を聞いた。

―社の歩みは。

 「創業者で祖父の福地鴻得(こうとく)は大工として戦後復興期に住宅を造っていた。大きな転機は1964年に嘉数高台公園(宜野湾市)の工事を請け負い、仲間とやり遂げたことで実績と信頼を得たことだ。現会長で父の裕吉(ひろよし)は山梨大学で土木工学を学んだ後、本土のゼネコンで働いていたが、1978年に会社を引き継いだ。だが当時の体制はゼネコンと比べギャップが大きかっために法人化し、人材育成と品質管理の2点に注力した。県外で働いていた人脈も生かし、社員を北海道や千葉県に出向させ、新しい情報や技術を学んだ」

―かつては商社で働き、21年に3代目社長に就任した。経営方針は。

 「温故知新だ。何を守り、どこを攻めていくのかを見極める。まず守りたいのは人材育成。『これは自分がやるから社長は黙っておけ』と言えるほど構想力や経験のあるリーダーを多く育成したい。もう一つは当然ながら技術や品質だ」

―挑んでいく部分は。

 「これまでの主流はRC(鉄筋コンクリート)造だったが、21年には高品質・省エネの木造住宅『ココウチ』事業を立ち上げた。建設後もアプリを活用して住宅管理をフォローし、長く使ってもらえる。RC、木造、それぞれの特長や客の要望がある。あらゆる希望に対応して提案できる多角的な人材を育てる」

 「もう一つ進めているのがリノベーション事業だ。住宅だけでなく、空き店舗を抱えたビル1棟をリノベーションする事業も手掛けている。前職でたたき込まれたのは『課題は何か』という視点。課題があるからニーズがあり、サービスや商品が生まれる。ビルの空き空間を再活用し、新たなニーズに応える。沖縄は多様性があり、そこが観光資源でもある。大規模な都市開発という手法ではない形でそれを守り、まちづくりに貢献する役割を果たしたい」

―課題という点でSDGsにも取り組むが。

 「沖縄は島しょ地域の事情で電気コストが高い課題がある。例えば1ブロックや分譲地などの規模感で、日中に太陽光発電で生んだ電力を病院や介護施設など日中に稼働する施設に融通し、夜間には住宅に供給するような『スマートタウン』ができないか考えている。沖縄にどんな課題があり、解決法があるのか。まちづくりとして提案できる企業を目指して成長したい」

(聞き手・島袋良太)