那覇市民会館、歴史を後世に NHK沖縄が3Dデータを市に提供


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バーチャル那覇市民会館の外観(NHK沖縄放送局提供)

 【那覇】NHK沖縄放送局の赤岩勇二局長は3月24日、那覇市役所を訪れ、NHKが取得した那覇市民会館の3Dのデジタルデータと、それを基に制作した「バーチャル那覇市民会館」のデータを知念覚那覇市長に提供した。2021年に那覇市とNHKで締結した協定に基づく提供で、市は今後、市民への公開方法を検討する。

 NHKは21年、測量などで使われる技術を活用し、那覇市民会館の外観からホール内部に至るまで、細部にわたりデータを取得した。このデータを基に沖縄国際大産業情報学科の大山健治講師の研究室と連携し、デジタル空間上にバーチャルの市民会館を制作した。バーチャル市民会館はパソコンなどで操作でき、建物内外を自由に見て回ることができる。

知念覚市長(右から3人目)にデジタルデータを提供したNHK沖縄放送局の赤岩勇二局長(同4人目)と沖国大の大山健治講師(同5人目)、学生ら=3月24日、那覇市泉崎の那覇市役所

 24日、知念市長と面会した赤岩局長は「取り壊し前に何らかの形で(市民会館を)残せないかと取り組んだ。データを活用し、市民会館の歴史を後世に伝えてほしい」と語った。また学生らと同席した大山講師は「今後、失われていく建築物をいかに継承できるかが課題となっているが、今回の取り組みはその解決策の一つとなるのではないか」と期待した。

 バーチャル市民会館の制作に携わった沖国大3年の具志鈴さん(21)は「完成品を見ると達成感があった。今後の展開が楽しみだ」と話した。

 知念市長は「那覇市民会館は戦後沖縄の近代建築の代表として評価されているが、コンクリートには寿命がある。データは今後、全国に発信していきたい」と述べ、提供に感謝した。

 市文化振興課によると、那覇市民会館は建物の老朽化のため16年10月から休館している。解体が予定されており、今後、跡地には複合施設の建設が計画されている。施設では今回提供を受けたデータの展示もする予定だ。
 (西銘研志郎)