首相「代執行は適切」 知事の辺野古承認取り消し批判


この記事を書いた人 田盛 良一

 安倍晋三首相は10日の衆院予算委員会で、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設をめぐり、政府が執行停止や代執行に着手したことに関し「適切な手段だ」と述べた。一連の手続きで執行停止と代執行を併用する手法の正当性を政権トップ自ら主張した。だが、国が「私人」と「行政機関」の二つの立場を使い分けているとして、識者からは「一貫性を欠く」などと批判は絶えない。「結論ありきだ」(翁長雄志知事)と反発する県側が納得する具体的な説明がないまま、法廷闘争へ突入する公算が大きい。

 首相は予算委で承認取り消しを受けた手続きについて「防衛局長は移設事業を再開するため迅速な手続きである審査請求を行うとともに、執行停止の申し立てを行った」と説明。国交相の立場から「緊急の必要性の判断の下に執行停止の決定を行った」と続けた。また、「最終的に司法判断を得ることができる代執行などの手続きに着手することがより適切な手段だと判断した」と述べた。
 こうした政府の対応を受け、県は国交相に対し、執行停止を申し立てた沖縄防衛局を「私人」と認める一方、代執行手続きで防衛局を「行政機関」と位置付けていることの整合性、執行停止と代執行の併用の矛盾点について問う公開質問状を送付している。だが、国交相が回答に応じるかは不透明な状況だ。
 首相は予算委で、知事の取り消し処分について「違法であり、著しく公益を害するものだ」とあらためて強調した。
 政府が10月27日に閣議で代執行着手を決定した際、首相は外遊先のカザフスタンで翁長知事の承認取り消しについて「違法だ」などと述べていたが、国会論戦の場でも翁長知事による取り消しが法に反するとあらためて批判した形だ。