サル痘疑いの患者に診療拒否の例も 沖縄県、周知不足認め体制整備急ぐ


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サル痘ウイルスの電子顕微鏡写真(国立感染症研究所提供)

 ウイルス感染症「サル痘(エムポックス)」に、県内でも2人の感染が確認される中で、医療機関による診療拒否が複数、確認された。サル痘は感染症法上の4類で、診療拒否は1類や2類を除き医師法に違反する可能性がある。県は医療機関への周知不足を認め、受け入れや相談体制の整備を急いでいる。

 県感染症診療ネットワークコーディネーターの新里尚美さんは、4月4~18日にサル痘関連で30人から相談を受け、このうち3人は診療拒否の相談だった。発熱や発疹の症状がある人も「そういう人は診ません」と言われたという。

 新里さんは「ただでさえ発熱や痛みなどでつらい中、拒否が続けば自尊感情の低下につながる恐れもある。免疫が低下している場合などは重症化する恐れもある。県内の公衆衛生の観点からも県主導で受診・相談体制を整えておくべきだった」と指摘する。

 県は先週、診療拒否を把握した。県の担当者は「県医師会などを通じ、検査につなぐよう各医療機関に周知してきたが不足があったと思う」と話す。周知に加え、相談窓口や医療機関のリスト化など受け入れ体制の整備を急ぐ考えを示した。県は、最寄りの医療機関に相談するよう呼びかけている。

 サル痘は感染者の血液や体液への接触、飛沫(ひまつ)などで感染する。年代・性別問わず感染リスクがある。国内でも感染が拡大しつつある。医師が感染を疑う場合、患者の皮膚や咽頭ぬぐい液などで検体を採取し、県衛生環境研究所に送って調べる。(中村万里子)