インボイス「取引不安」「仕組み複雑」、県内事業者、導入に不満も


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 導入まで半年を切った新たな消費税のルール「インボイス制度」。沖縄国税事務所は周知を図るが「今後の取引が不安だ」「複雑でよく理解できない」など、事業者から不満も漏れる。

 「個人事業者が、インボイス制度の導入で淘汰(とうた)されることにならないか」。フリーライターの経験がある40代の女性は不安げに語る。

 年収が1千万円に満たない事業主はこれまで「免税」とされてきた。制度導入後はインボイス登録事業者でなければ、取引先企業は仕入れにかかる消費税の免除制度である「仕入税額控除」を受けることができなくなる。少しでも利益を確保したい企業側が、インボイス未登録事業者との取引を見直す可能性もある。

 課税企業側が免税事業者に対してインボイス発行を強引に迫ったり、消費税分を価格から割り引いたりすることも懸念される。政府はこうした行為について「法令違反に該当する可能性がある」と注意喚起しているが、免税事業者の全体数を把握できていないのが実態で、事業者間の全ての取引内容に目を光らせるのは厳しいのが実情だ。

 宜野湾市在住でフリーランスのデザイナーとして働く免税事業者の30代女性は「事務員を雇用せず全て1人でこなしているので、時間にもお金にも余裕がない」とため息をつく。インボイス制度に現在は申請をしていないが「制度開始後の状況を見て、課税事業者への転換を検討する」と述べ、取引に支障が出ないよう登録を視野に入れる。

 県内の免税事業者からの相談を受けている公認会計士で税理士の本永敬三さんは「これまでにない制度で仕組みも複雑だ。丁寧な説明もなく進められ、小規模事業者が対応できていない」と訴えた。
 (普天間伊織)

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<用語>インボイス

 売り手の事業者が買い手に対し、消費税の適用税率や額を伝える請求書類。8%と10%の複数税率の下で正確な税額を計算するために導入が決まり、発行事業者は税務署に登録する必要がある。本来は10月の制度開始時点で登録事業者になるためには3月末までの申請が必要だったが、税負担が増える事業者が慎重に登録の是非を検討できるよう、4月以降も申請できる仕組みに変更された。