米国の機密文書が交流サイト(SNS)に流出した事件で、連邦捜査局(FBI)は13日、東部マサチューセッツ州の空軍州兵ジャック・テシェイラ容疑者(21)を逮捕した。
∧ワシントン・ポスト紙によると、同容疑者はIT技術者で、機密情報を扱う国防総省のネットワークへのアクセス権限を持っていた。/機密情報はゲーム愛好家に人気のSNS「ディスコード」のチャットグループで「OG」と呼ばれるリーダーが投稿していた。米メディアによると、オンライン上の記録などによりOGがテシェイラ容疑者だと判明したという。FBIは13日、マサチューセッツ州にある容疑者の母親の自宅を捜索。米テレビは、同州で当局者らに取り囲まれたテシェイラ容疑者が拘束され、車に乗せられる映像を放映した。/オースティン国防長官は13日、声明を発表し「国防総省内の情報へのアクセスや管理手続きを見直す」と強調し、再発防止に向けて取り組むと表明した∨(14日、本紙電子版)。
インテリジェンスの世界で、秘密情報を漏えいする人の動機は、MICEのいずれかだと言われている。
MはMoney(金)、IはIdeology(イデオロギー、思想)、CはCompromise(通常、妥協と訳されるが、スパイ活動の文脈では脅迫を意味する)、EはEgo(エゴ)。
協力者(スパイ)として、一番貢献が期待できるのが、思想によって協力する人だ。次が金で動く人だ。もっとも金目的で偽情報を流してくる場合があるのでこういう協力者が持ってくる情報は精査する必要がある。
意外と役に立たないのが、脅迫されて協力する人だ。人間の心理として、脅してくる人には最小限の協力しかせず、自発的に秘密情報を探って伝えてくることをしないからだ。
最も面倒なのが、承認欲求を満たしたいというようなエゴで情報を漏えいする人だ。こういう人を運営することはほぼ不可能だ。流出した情報を見つけて精査するしかない。今回のテシェイラ容疑者の動機は典型的なエゴに基づくものだ。「俺(私)はこんな秘密を知っている」ということを披露して、周囲から「すごい」と思われたいという動機だ。下級のインテリジェンス・オフィサーの秘密情報漏えいでは、エゴを理由とするものが多い。
テシェイラ容疑者の事件で、米国のインテリジェンス・コミュニティーでは、need to knowの原則、すなわち秘密情報は必要とする人だけが知る態勢をとるという原則が守られていないことが明らかになった。テシェイラ容疑者のような兵卒が、軍最高幹部用の極秘資料にアクセスできること自体がおかしい。
またインテリジェンス部門に配置する際に受ける心理テストと面接でテシェイラ容疑者の自己顕示欲が肥大していることをつかめなかったことも理解しがたい。いずれにせよ今回の事件で米国のインテリジェンス・コミュニティーは、大きな打撃を受けた。 (作家、元外務省主任分析官)
米機密文書漏えい事件 原因は空軍州兵のエゴ<佐藤優のウチナー評論>
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琉球新報社