戦禍免れた刀剣、沖縄に戻る 琉球王妃の家系が受け継ぐ 沖縄県立博物館に寄贈・公開


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刀剣を寄贈した田中典子さん(左から2人目)ら(宇久田全正さん提供)

 琉球国王・尚貞王(在位1669~1709年)の王妃の家系である宇久田家に代々伝わった刀剣3振り(刀、脇差し、短刀)が3月までに県立博物館・美術館に寄贈された。宇久田家の子孫、田中典子さん(59)=兵庫県=の祖父が、沖縄戦を前に関西に移していたため戦禍を免れた。沖縄に戻るのは約80年ぶり。28日に始まる同館の新収蔵品展で公開される予定だ。

 親類の宇久田貢さん(74)=南風原町=によると戦前、南風原町の宇久田家の墓に納められていた刀、横笛、銅鏡が親類に分け与えられた。長男だった田中さんの祖父・全昌さんが刀を受け継ぎ、仕事の関係で大阪に持ち出した。四男に渡された銅鏡、六男に渡った横笛はともに沖縄戦で失われたという。

県立博物館・美術館に寄贈された刀剣

 田中さんは父・弘道さんの死後、刀を受け継いだ。弘道さんが専門家に研いでもらうなど手入れしたが「今後もきちんと手入れをしなければ、いずれ朽ちてしまう。専門家に任せれば、歴史的なこともひもといてもらえるかもしれないと考えた」と語る。

 親類に相談し、県立博物館・美術館への寄贈を決めた。「元々あった沖縄に戻ることができ、父も祖父も喜んでくれていると思う」と語る。

 宇久田家はこれまでに家譜や家の歴史の解説本も同館に寄贈している。刀の由来ははっきりしないが、3月の寄贈時に同館の学芸員だった外間一先さんは「有力な士族に刀が与えられたという記録はあるが、3振り合わせていい状態で残っているのは貴重だ。王家との関わりも含め、家譜や当時の記録などと照らし合わせて研究する余地がある」と話した。
(宮城隆尋)