ジェンダーフリーのカップル撮影、自然体で LGBT当事者のAKARIさん・YUIさん 配慮細やかに写真・映像を制作


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ジェンダーフリーのカップル写真・映像を制作するフォトグラファーのAKARIさん(左)とビデオグラファーのYUIさん(右)=翠提供

 フォトグラファーのAKARIさん(27)と映像撮影、編集を担当するビデオグラファーのYUIさん(31)はクリエイターチーム「翠 sui」を結成し、ジェンダーフリーのカップルフォト・ムービーを主に手掛けている。2人は女性同士のカップル。LGBT当事者として、適切な配慮や細かい気配りを重視する。周囲の視線を気にせず撮影できるよう、人が少ない場所や時間帯を選ぶなど工夫している。

 福岡県出身のAKARIさんと三重県出身のYUIさんは、東京のライブ会場で知り合い、3年前に交際を開始。約2年の遠距離恋愛を経て、2022年、沖縄に移住した。AKARIさんは理学療法士、YUIさんは保育士としてそれぞれの地元で働いていたが、家族や友人、勤務先には同性のパートナーがいることを隠していた。

 「『彼氏いないの?』とか『結婚しないの?』とか、何気ない会話にいちいち傷ついてしまう。相手に悪気がないと分かっていても、つい愛想笑いを返して、そのたびに罪悪感を覚えていた」とAKARIさんは振り返る。精神的な疲労が蓄積し、人生をリセットする目的で沖縄への移住を決めた。趣味の写真を仕事にしたいと考え、同性のパートナーを持つ人たちの記念になる作品を残すことにした。

 パートナーのYUIさんも、AKARIさんからの相談を受け、沖縄行きを即座に決めた。「彼女が傷ついて疲れていることは知っていたし、自分もフットワークが軽いタイプ。知らない土地での再出発だが、2人なら大丈夫だと思った」と話す。独学で動画編集の技術を覚え、ビジネス面でもAKARIさんのパートナーになった。

 YUIさんは短い髪にパンツスタイルがトレードマーク。これまでに数えきれないほど「もっと女性らしくしろ」という言葉を向けられてきた。「子どもの頃はスカートをはくのが嫌だった。高校ではズボンとスカートを選べたが、実際にズボンを選んだ人は周囲から同性愛者だと決めつけられて、じろじろ見られるため、現実として制度が機能していたかは疑問。校内で2人ほどしかズボンを選ぶ生徒はいなかった」と振り返る。

 AKARIさんも「自分の弟は親から『男なんだからしっかりしろ』と言われていた。男性らしさ、女性らしさといったジェンダーの締め付けは男女関係なく存在するのではないか」と同調し、「レズビアンとかバイセクシュアルとかそういうカテゴリーにはめようとする人もいるが、誰かを愛することにカテゴリーは必要ない。そういった名称自体がなくなったとき、本当に平等な社会になるのでは」と思いを語る。

 「写真や映像を通して、誰もが自然体で生きられる理想の世界を表現していきたい。被写体はもちろん、見た人も元気になれるような作品を作りたい」。2人は今後の活動に意欲を見せる。
 (普天間伊織)