〈146〉がんの手術後の経過観察 再発、大半は術後5年以内


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 がんの摘出手術を受けた人は、その後数年間、担当医師の外来に通います。手術でがんの塊はすべて取り除かれたはずなのに、定期的に全身の画像検査があったり、術後に抗がん剤治療を行ったりするのはなぜでしょうか。

 まずは、がん細胞の性格について知っておく必要があります。がん細胞は、いくつもの特性を持っています。正常細胞と違い、無制限に複製し持続的に増殖する信号を出す能力を獲得します。それらの働きでがん細胞は増殖し、塊をつくります。塊をつくると、がん細胞は細胞の接着する性質が低下し、動きやすくなる能力を獲得します。そうして塊から離れたがん細胞は血液中を循環して、たどり着いた先の臓器に接着し「転移」と呼ばれる新たな塊として増殖します。

 手術でがんを取り除いても、がん細胞はすでに血液中を浮遊していたり、他の臓器にわずかに染みついていたりする可能性があります。そのために、医師は手術後に定期的に診察し、採血や画像検査で再発や転移がないか注意深く観察を行います。また、手術時にがんが進行している場合は、転移や再発の可能性を考慮し、抗がん剤治療を行います。

 手術後の経過観察を「術後サーベイランス」と呼ぶことがあります。サーベイランスとは、注意深く観察するという意味です。

 がんの再発のほとんどは術後5年以内に起こります。例えば、食道がんの根治術後の再発のうち、約85%は術後2年に認められます。また、子宮体がんの場合は、再発例の75%が3年以内です。大腸がんは、96.5%が5年以内の再発です。

 そのため、多くの臓器が観察間隔を術後2~3年目までは3~6カ月ごと、3年目以降は6カ月ごととしています。臓器によってガイドラインで推奨される術後サーベイランス期間は異なります。術後5年が目安となりますが、術後5年以上でも、10年以上でも年1回は診察を推奨している臓器もあります。一定期間後は、地域のかかりつけ医や基本検診、人間ドックの有効活用を推奨するガイドラインもあります。

(仲地厚、友愛医療センター 外科)