国家賠償訴訟が「最後の手だて」 里親の権利保障ない現行制度


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 生後2カ月から5年以上養育していた里子を委託解除された50代夫妻が、国家賠償法に基づいて県を提訴した背景には、里親の権利保障が十分でない現行制度の中で、入り口で原告適格を争わない国賠訴訟による訴えが「里親側に残された最後の手だて」との思いがある。

 夫妻は委託解除前の2021年12月28日、県を相手に措置解除の差し止めを求めて提訴したが、那覇地裁は「委託措置解除は訴訟対象となる処分に当たらず、原告適格もない」として即日訴えを却下した。

 国賠訴訟の原告代理人の一人、加藤博太郎弁護士は「里親の権利を認めた法律がないのが問題点」と指摘。「声を上げると委託措置が解除されてしまうため、訴えない里親も多い。だからこそ今回の裁判は注目されるだろう」とし、慰謝料請求を主眼としていない訴訟意義を説明する。ただ、本件訴訟でも「里親にどのような権利があり、どう侵害されたかという審理は避けられない」などの懸念材料は残るという。

 訴状には、知事直轄の外部有識者が委託解除手続きの問題点を指摘した調査委員会最終報告書の内容が列記されている。提訴に至る判断材料の一つともなっており、川津知大弁護士は「対応が違法、不当なものなら責任をとってもらいたい」と語った。
 (嘉陽拓也)