【記者解説】見通しの甘さ露呈 南部ごみ処分場白紙 新たな用地選定に問われる首長の本気度 沖縄


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2019年に決定したごみ処理施設の建設計画の撤回に向けて話し合う南部広域行政組合の環境衛生関係市町村理事ら=11日午前、八重瀬町の南部総合福祉センター

 【南部】沖縄南部広域行政組合が2019年8月に決定していた南部ごみ処分場整備計画が、一転して白紙撤回に追い込まれた。背景には、予定地だった八重瀬町具志頭地区にある畜産業者の町外移転に関する、行政組合の見通しの甘さがあった。

 業者が移転する考えを同組合に伝えたのは19年12月。組合側は当時から国補助金の活用を念頭に置いていたが、具体的に補助メニューを探し「活用困難」との結論に至ったのは22年度になってからだった。業者の移転先の環境影響評価(アセスメント)についても、22年夏に県から「必要」との連絡があるまでは、想定していなかった。

 19年の計画決定後、基本設計や地質調査に6市町の負担金6400万円、環境省交付金2200万円の計8600万円を投じている。今回の白紙撤回を受けて、環境省交付金は返還する見込みだ。

 焼却炉の新たな用地について、同組合は「最短2年」での決定を目指している。しかし19年に八重瀬町が誘致を申し出るまでは6市町いずれからも手が挙がらず、公募に応じる自治会もなく、組合側が6市町それぞれに1カ所ずつの候補地推薦を課した経緯もあった。

 用地選定が困難なごみ処理施設だからこそ、丁寧な計画策定が必要だった。市民の暮らしを滞らせないためにも、新たな用地決定に向けて、各首長の本気度が問われている。

(岩切美穂)