【識者談話】適切な点検、専門家育成を 沖縄県橋の老朽化 下里哲弘氏(琉球大学教授)


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
下里 哲弘氏(琉球大学教授)

 一般的に鋼材はコストがかかるため、公共工事には鉄筋コンクリートを使っている。塩は酸化の速度を上げる。沖縄は年間を通して塩分を含む強い風が吹くことに加えて、高温多湿な気候から県外に比べて塩害の被害が大きい。

 沖縄を塩害から守るための防食マニュアルを総合事務局や県と一緒に作っている。塗装の種類のランクを上げたり、鉄筋コンクリートの中の鉄筋に塗装をしたりして沖縄仕様にしている。

 ピンチはチャンスだ。沖縄は塩害で苦しんでいるが、逆手に取れば塩害の影響がある場所でもしっかり丈夫な橋を長持ちさせる技術は、塩害で困っている県外の地域にも役立つだろうし、東南アジアにも展開できる。沖縄で通用すればどこでも通用する。

 古くなったから劣化するのではなく、適切な点検をしないから劣化する。ヨーロッパの建造物を見ても分かる。定期的に適切なメンテナンスが損傷の重症化を防いでいる。守っていく産業をつくるべきだ。新技術を積極的に取り入れ、橋の点検の専門家を育成するシステムを行政が構築するべきだ。人間のお医者さんと一緒で橋にも医者をつくらないといけない。

 行政だけではなく、県民・市民もインフラを自分のものだと思って考えてみてほしい。市民側からも声を上げることが大事だ。
 (社会基盤工学)