県内初の再生医療専用施設が6月に稼働 由風BIOメディカル(うるま市)が日立グループと協業で導入 沖縄で医療ツーリズムを推進


この記事を書いた人 琉球新報社
3社協業による事業について説明する由風BIOメディカルの中濵数理社長(左端)ら=18日、県庁記者クラブ

 沖縄県うるま市で再生医療事業を手掛ける由風(ゆかぜ)BIOメディカル(中濵数理社長)がこのほど、日立グローバルライフソリューションズ、日立製作所との協業で、最新式の細胞培養加工施設(CPC)と、製品などの情報を一括管理するシステム「再生医療等製品バリューチェーン統合管理プラットフォーム」を導入した。医療機関併設ではない独立した再生医療専用施設は県内で初めて。

 6月から稼働し、再生医療を生かした地域共生社会の実現を目指す。

 18日に県庁で開いた3社合同の記者会見で、由風BIOメディカルの中濵社長は「医療ツーリズムの市場規模は5500億円ともいわれる。温暖な沖縄で心身を癒やし、健康になれる環境を提供することで、県の発展にも貢献したい」と抱負を語った。

次世代モジュール型CPCが導入された培養室(由風BIOメディカル提供)

 由風BIOメディカルは「再生医療×リゾート」を掲げる。独立構造のため設置、増設が容易なCPCの本格稼働により、再生医療を必要とする患者とその家族の沖縄への誘致を図る。細胞培養・加工といった再生医療を受ける患者や付き添いの家族に温暖なリゾート環境で心身を癒やせる環境を提供する。

 製品の品質が人命に直結する医薬品は、グローバル基準の品質管理を確保できる製造施設に加え、サプライチェーン(供給網)上の各業務、配送記録などの厳格な管理が求められている。

 一方で、再生医療安全確保法に基づく特定細胞加工物の流通では、検体採取から特定細胞加工物の投与までの工程で個体管理や情報識別を行うための標準的な仕組みが定められていない。

 新施設では、医薬品製造受託機関(CMO)や病院、物流企業などでの情報連携をクラウド上で行うことでミスの予防を徹底する。

 中濵社長は「再生医療は患者や細胞提供者から採取した細胞を培養して患者に投与するもので、ミスがあってはならない。患者が安心して治療を受けられる環境づくりが重要だ」と話した。
 (普天間伊織)