玉城デニー知事は19日、名護市の辺野古区公民館で久辺3区の区長や行政委員長と面会した。3区長と知事の面談は2014年の翁長雄志県政発足以降、初めて。辺野古新基地建設反対を掲げ当選した玉城知事と、移設事業に容認姿勢を示す辺野古区など地元の間には立場の違いもあるが、米軍のヘリパッドから生じる騒音問題への対応など連携して取り組む課題も再確認し、対話継続の一歩を踏み出した。
■「辺野古新基地」の表現避ける
「仲井真知事時代に久辺3区にお越しいただいたのを最後に、知事の訪問はなかった。次はいつお越しになるかという気持ちだった」
辺野古区の島袋茂区長は会談の冒頭でこう切り出した。政府閣僚とは毎年のように面会を重ね「政府は久辺3区に寄りそう姿勢を示している」と述べ、これまでの県の姿勢に苦言を呈した。
面談は予定の1時間を超えて行われ、議論は地域活性化を中心に「終始穏やか」(県関係者)に進んだ。
地元側は、従来から求めてきた県道13号の拡幅や集落排水事業、避難橋の整備などの進展を求め、県側は対応を説明した。
県側は今回の面談で「普天間飛行場代替施設建設事業」と表現し、地元が嫌がる「辺野古新基地建設」という言葉の使用を避けた。地元側も埋め立て工事に対するスタンスについて「そのような内容はしゃべっていない」(島袋辺野古区長)とするなど、双方に相手への配慮がうかがえた。
一方、辺野古新基地建設工事に対する県の考えも問われた。会談後、玉城知事は「普天間も含め沖縄の目に見える米軍基地負担軽減をずっと訴え続けている」との考えを伝えたことを明かした。
会談を終え島袋区長は「(初面談は)遅かったと感じる。ただ、来てもらったことに関してはよかった」と語り、継続的な対話を望む。玉城知事も前向きな姿勢を示した。
■与野党それぞれの評価と思惑
今回の面談は、県政野党の自民党会派が県議会で重ねて求めてきた経緯がある。面談を6月定例会前に行うことで「野党の追及を避ける」(県政与党関係者)狙いもにじむ。
自民県議の一人は、面会を求めてきた狙いについて「新基地建設に反対する知事」が、建設に容認姿勢を示す「地元の地元の声」を聞くことで、どう受け止めるかが問われると語った。地元が求める事業には辺野古移設の受け入れを前提に、生活環境の悪化を避ける目的のものもあるとし「県はどう対応するのか。議会で追及する」と意欲を見せる。
一方、県政を支える与党議員は「知事が直接足を運び、話を聞く姿勢を示した」と成果を指摘する。
辺野古移設を巡り、玉城知事は国に「対話による解決」を訴えてきたことに触れ「こっちは(地元との)対話を始めた。政府はどうするのか。自民県連が国を説得して(県との)対話のテーブルに着かせるべきだ」と語り、政府・自民党に対する「プレッシャーをかけられる」と意義を強調した。
(知念征尚、佐野真慈)