全国一長時間労働の沖縄 柔軟な働き方で改革を 富原加奈子(県経営協女性リーダー顧問)<女性たち発・うちなー語らな>


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 近頃よく見かける「抱っこひもパパ」。時折、いとおしそうに赤ちゃんをのぞき込む姿にほっこりする。男性の育児休業取得促進が義務化されたこともあり、そんな姿はますます増えるだろう。今でこそ女性の育休も当たり前になってきたが、最初は実現は難しいのではと思っていた。

 「子どもが1歳になるまで休める制度ができるんだけど、休みを取らない?」。東京から帰郷し、りゅうせきの総務課に勤務、その後結婚、出産、2人目の産休で自宅にいた私に人事の責任者から電話があった。育児休業法施行2年前の先行導入で、突然の話に戸惑いの方が大きい。

 1年も休んで大丈夫だろうか? 悩んだ末、恐る恐る半年間を申請した。長男の時には、まだ制度がなかったので、その違いを大きく感じる。生まれて間もない0歳児の預け先を探すのも難しいし、睡眠も満足に取れない中での仕事との両立も大変だ。新制度はほんとにありがたかった。

 事例を重ねると制度の課題も見えてくる。休業中も継続する税金・保険料の支払いなど、給付金はあっても持ち出しが大きい。有給休暇を消化してから休業に入るので休暇残ゼロ、すぐには新たな休暇の発生もなく、子どもが熱を出して休むと欠勤になる。評価も休業すると低い評価となり、賞与や昇級・昇格試験の受験資格にも影響する。

 現在では給付率や休暇制度が改善され保険料も免除となり、女性の取得率は8割を超えた。もっとも評価や昇給・昇格は各組織の制度で、育休が不利にならないよう積極的に改善した組織もあれば、未整備のところもあり、男女の給与格差の隠れた要因ともなっている(この機会にぜひ自身の組織の制度を確認してみていただきたい)。

 男性の育休の取得率はいまだ2割に届かない。収入や昇給・昇格なども大きな課題だ。さらに休業中の仕事はどうするのか。普段から残業も多い中、出勤すると、仕事が山のようにたまっていたり、同僚にしわ寄せがいったりしては、本末転倒だ。おのずと形ばかりの短期間取得となってしまう。目指すは日頃から定時に帰り、急な休みや休業でも、お互い気軽にカバーし合えるゆとりある環境だ。

 長時間労働で知られる日本の47都道府県の中でも一番の長時間労働県沖縄。改善レベルではなく、根本的な働き方の見直しが必要だ。コロナは災いだが、働き方を変えるきっかけにもなった。働く場所や時間を柔軟にし、長さではなく成果を評価する考え方を学んだ。DX化も進み始めている。

 女性の育児休業に続き、男性の育児休業、さらに柔軟な働き方! そしてそれは誰もが働きやすい環境。そんな環境を目指し、あちこちで働き方改革が始まっている。このきっかけを大事にしたい。