「一ついいですか…」決戦を前に、エースが魂のスピーチ<キングスBリーグ初制覇・最強の証明>1・後編


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千葉Jとの第1戦の第4Qでオフェンスファウルを奪い、拳を固めるキングスの今村佳太=27日、横浜市の横浜アリーナ(小川昌宏撮影)

 オフェンスレーティングでリーグダントツ1位の千葉ジェッツと、ディフェンスレーティング1位の琉球ゴールデンキングス。チャンピオンシップ(CS)ファイナル(決勝)は、今季最強の“矛”と“盾”の勝負となった。27日の第1戦はCS決勝初のオーバータイム(延長戦)になり、それでも決まらずダブルオーバータイム(再延長戦)にまで突入する、まさに「死闘」と言える試合となった。

▼前編「史上最強の相手を倒し王者に」から続く
 

 第1戦へ挑む前のミーティング。桶谷大ヘッドコーチ(HC)の話が終わると、「一ついいですか」とエースの今村佳太が声を上げた。「レギュラーシーズンからCSまで『我慢』という言葉を使ってきて、我慢ができるチームになった。(それでも決勝は)『我慢』して自分たちに『勝ち』が来る舞台ではないし、相手でもない。40分間、自分たちの時間にできるように奪い取る気持ちでやっていきましょう」と仲間に声を掛けて円陣を組み、決戦の舞台へと向かった。

 第1戦、キングスはリバウンド王にも輝いたジャック・クーリーを中心とした、武器であるリバウンドからのセカンドチャンスで点を重ねた。厳しい守備で千葉Jの武器である3点弾を防いでいった。それでも相手の猛攻で延長戦へ。延長戦でも決まらず、再延長戦となった。お互いに体力は消耗しているが、強力なセカンドユニット(控え)が活躍し、選手のタイムシェアをしていたキングスにわずかに体力が残っていた。再延長戦ではエース今村が5分間で6得点を挙げて、逃げ切った。

 激戦を制して優勝へ王手を懸けたキングス。28日の決勝第2戦は、岸本隆一の3点弾で幕を開けた。その光景はくしくも3月の天皇杯決勝で千葉Jに敗れたスタートと同じだった。しかし、すぐに千葉Jの富樫勇樹が3点弾を決め返し、天皇杯敗戦後に岸本が話していた「相手の流れを断ち切る強さ」を見せつけられた。

 さらに千葉Jは前日からディフェンスリバウンドへの意識を高くしていた。キングスの外国籍選手を外へ引っ張り出し、ゴール下を空ける。シュートを打たせては、サイドからスピードある選手がリバウンドを奪取する。キングスのオフェンスリバウンドは27日の24本から12本へと半減させられた。キングスが3点弾に警戒していると、富樫が縦パスをインサイドへ供給し、アリウープで得点を決められた。それでもキングスは千葉Jの武器である3点弾を抑えた。そしてゾーンに入ったコー・フリッピンが攻守で大暴れし、チーム最多の21得点を挙げた。レギュラーシーズンでは成功率51・3%だったフリースローは、10本すべてを決めきる活躍などで逃げ切った。

 昨季は頂点に届かず、涙を流した今村。「悪いことが多かったシーズンではあったが、本当に最後の最後で最高な最強なチームになった」とうれしそうにチームの活躍を振り返った。

(屋嘉部長将)