絵を通じ戦争考える 佐喜眞美術館の館長が講話 沖縄戦の記憶継承プロジェクト


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「沖縄戦の図」の前で講話する佐喜眞美術館館長の佐喜眞道夫さん=3日、宜野湾市の佐喜眞美術館(喜瀬守昭撮影)

 沖縄戦の記憶継承プロジェクト―戦争をしない/させないために(同プロジェクト実行委員会主催)の第5回講座が3日、宜野湾市の佐喜眞美術館で開かれた。佐喜眞道夫館長(77)と学芸員の上間かな恵さん(57)が「沖縄戦の伝え方」をテーマに講話し、約20人が参加した。佐喜眞館長は「沖縄戦の図」の前で、美術館の立ち上げの経緯や沖縄戦の図を解説。「絵の前に立つと、度肝を抜かれることになる。見る人によって受け止め方が違うことに絵の有効性がある」と語り、絵を通じてそれぞれが沖縄戦を考える大切さを強調した。

 「沖縄戦の図」は「原爆の図」など戦争の実情を描いた画家・丸木位里、俊夫妻が晩年に描いた。沖縄に通い体験者の証言や本などに基づき、6年かけて制作した。

 同館は現在、14部作すべてを公開している。上間さんは、日本軍の住民虐殺を描いた「久米島の虐殺」や「自然壕」など順を追って解説した。「絵に答えはない。何度見ても、見尽くすことはできない作品だと思う」と語った。

 佐喜眞館長は「アートは感性に訴える」とし、そのアートの力を借りれば「差別構造の深い溝を乗り越えられるのではないか」と話した。

 講話後、佐喜眞館長は「沖縄戦が民衆にとってどれだけ悲惨なものだったのかを理解してほしい。沖縄が再び戦場になるなんてとんでもない、という思考回路になってほしいと願っている」と語った。
 (高橋夏帆)