沖縄県の外交、知事の訪中 「小国」の知恵で存在感を 林泉忠・武漢大日本研究センター長に聞く


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地域外交に「小国の知恵を活用するべきだ」と話す武漢大日本研究センター長の林泉忠教授=那覇市内

 沖縄県は4月に地域外交室を新たに設置し、国家間だけでなく地域同士で信頼関係を構築し、平和と持続的な発展を目指す「地域外交」に注力している。7月には玉城デニー知事が日本国際貿易促進協会(国貿促)の訪中団に参加する。元琉球大准教授で、現在は武漢大の日本研究センター長を務める林泉忠教授に、県による地域外交の可能性などについて聞いた。

 ―地域外交を進める県の方針をどう考えるか。

 「沖縄の歴史的な歩みは日本本土と違う。地域外交室を設置した目的はよく理解できる。ただし、今は日本、アメリカ、中国の関係が複雑になっているので、慎重にバランスよく進めていった方が良い」

 「かつて琉球は、日中に挟まれた小国でありながら知恵を発揮して存在感を示してきた。自らの位置付けをよく理解し長所を生かしたことで栄えた。今、日本の枠組みの中にある沖縄という位置付けながらも、独特の対外関係を構築して国際環境を改善していく努力をするのは、万国津梁の気概と知恵を取り戻すことになると期待している」

 ―知恵が必要だと。

 「例えば、県は4月の時点で知事の訪中について二つの案を持っていた。一つは県独自で行く案。もう一つは国貿促の訪中団に参加する案だ。県はアメリカ、韓国、さらに今後台湾にも単独で訪問する。本来の地域外交の目的からすれば、相手に平和と戦争反対を訴える必要があるが、訪中団への参加では訴える機会はないかもしれない。しかし、訪中は他の地域よりもセンシティブな部分があるため、今回は日本の中の沖縄という位置付けを示しながら慎重にしたのだと思う。沖縄独自のバランス感覚を示している。まさに小国の知恵と言え、評価できる。うまく行けば、来年以降に県単独で訪問しても不自然ではない」

 ―「台湾有事」のリスクが叫ばれている。

 「沖縄は過去の悲惨な戦争の被害を受けた歴史の記憶があり、二度と戦争に巻き込まれたくないという強い思いがある。だけど『台湾有事反対』と言うと、有事にアメリカや日本のサポートを望む台湾側からすれば違和感を感じると思う。平和を求める沖縄の訴えを理解するが対外的には説明不足だと思う。自分たちの論理を整理した上で展開していくべきだ。歴史的にも中国本土、台湾双方と良い関係を作ってきた沖縄がソフトパワーを発揮して、新たな時代の架け橋となれると信じている」
 (聞き手 沖田有吾)