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反対しても始まる「戦争」<伊是名夏子100センチの視界から>150


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「戦争はどうやったら始まるの?」。7歳の娘が聞いてきました。答えに戸惑いながら「鉄砲などを作ったり、買ったり、道具を準備して戦う人を訓練して、戦争の準備を始める。そして他の国とけんかをして、だんだん仲が悪くなり、国のリーダーが『戦争を始めます』の宣言があるのではないかな」と私。さらに娘が「たくさんの人がやらないって言ったら大丈夫だよね?」と聞いてきたので、「もちろんたくさんの人が反対するのは大切だけど、一部の人だけで悪いルールを作ったり、リーダーが勝手に決めたりすることもあるよ。だからいいリーダーを選ぶことが大切だよ」と答えました。

 武器のための予算が増え、ミサイル配備が進んだり、個人情報を国が集めやすくなったり、外国人を排除しやすくなるルールができる今。反対の声が大きくなっても、十分な話し合いはなされずに作られる法律もあります。時にはデマを広める政治家もいます。いろいろな考え方があるのはいいことなのですが、誰かを排除したり、人の命を脅かすものは避けるべきだと私は思っています。

 今年アカデミー賞を取った「ナワリヌイ」というドキュメンタリー映画を見ました。ロシアのプーチン大統領を批判する活動家・ナワリヌイが、2020年にロシア政府のたくらみで毒を盛られ、暗殺されかけ、その真実が暴かれる記録映画です。ナワリヌイは今も投獄中。恥ずかしいことに、私はその事実を最近まで知りませんでした。

 ロシアが戦争を始めて、もうすぐ1年半がたちますが、その前からずっと独裁がはびこっていたのでしょう。嘘のような本当の話に怖くなりますが、もしかしたら、今私の身の回りでもそれに近いこともあるかもしれません。偏った考えが通る政治が行われていることは否めないのですから。

 「悪人が勝つのは、善人が何もしないからだ」とナワリヌイ。私たち一人ひとりが、平和な毎日を作るために、何ができるか考え、動くことが大切なのかもしれません。沖縄は慰霊の日があり、戦争や命について考える機会が定期的に持たれますが、県外だとそれが少ないように感じます。怖いけれども、戦争について話し、疑問に思ったことを調べてみることを続けたいです。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。