〈149〉食物アレルギー予防 「授乳・離乳ガイド」で効果


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 食物アレルギー患者は増加し、本邦でも乳児の約10人に1人は何らかの食物アレルギーをもっていると報告されています。約20年前、食物アレルギーは乳児の未熟な腸から食物のタンパク質が吸収されることで発症すると考えられていました。

 しかしその後、離乳食の開始を遅らせることでむしろ食物アレルギーが増加し、その主な原因は“腸から”ではなくアトピー性皮膚炎などの荒れた“皮膚から”であることが解明され、腸からの吸収はむしろ食物アレルギーを防ぐ働きがあることがわかってきました。近年では、鶏卵や牛乳などアレルゲンとなりやすい食物をいつから食べ始めるかについて研究が進んでいます。

 鶏卵アレルギーについて、日本小児アレルギー学会は2017年に「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」を発表し、アトピー性皮膚炎の児では早期に皮膚炎を治し、生後6カ月頃から微量の加熱卵を食べ始めることを推奨しました。19年には厚生労働省による「授乳・離乳の支援ガイド」が改訂され、生後5~6カ月頃から固ゆで卵黄の開始を試みることが推奨されました。

 これらの提言やガイド改訂の効果の裏付けとして、滋賀県の保育園児約3万人を対象とした調査で、13年と比べ21年では1~2歳児の食物アレルギーが減少し、特に鶏卵アレルギーが減少したと報告されました。

 牛乳アレルギーについては、(1)母乳で足りている場合、生後3日間はミルクを足さない(ただし脱水、低血糖、黄疸に十分注意する)(2)少しでもミルクを摂取した場合は生後3カ月頃まで中止せず1日10ミリリットル程度の少量でもいいので継続する―の2点が重要で、さらにこの方法は母乳栄養を妨げないと報告されています。

 これらの知見は本邦の食物アレルギー診療ガイドライン2021で紹介され、(1)については欧州アレルギー臨床免疫学会、(2)についてはカナダ小児科学会など海外でも推奨が広がっています。

 湿疹の放置、不安だから食べない、が最も食物アレルギーのリスクになります。鶏卵やミルクについても、不安があればかかりつけ医にご相談し、必要に応じアレルギー専門医受診を検討されてください。

(崎原徹裕、ハートライフ病院 小児科)