前例なしの農水相「是正指示」 国、理由あいまいも「適切に行使」繰り返す 辺野古・係争委


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池田竹州副知事らが出席した国地方係争処理委員会の会合=16日、総務省

 沖縄県名護市辺野古の新基地建設工事に伴うサンゴの特別採捕許可申請で、県が農林水産大臣から受けた「是正の指示」の取消勧告を審査する国地方係争処理委員会(菊池洋一委員長)が16日に開いた会合で、県側と農水相側が、互いの陳述について質問を交わす場面があった。農水相による「是正の指示」が前例のないものだったことも明らかになった。県の代理人は「工事を進めるための『是正の指示』だ」と指摘した。

 「許可処分を行った事案は何件あるのか」

 互いの陳述について質問の応酬が繰り広げられた場面。県の代理人として会合に参加した仲西孝浩弁護士は、争点となっている農水相の「是正の指示」について前例の有無を問うた。農水相の代理人である水産庁の幹部は、「確認できる限りではありません」と回答。

 仲西氏が「権限発動した理由は」とさらに尋ねると、「事実確認を行った結果、許可をしないこと自体が違法と判断した」とだけ答えた。「地方公共団体の自主性に配慮したか」との問いにも、「根拠法に基づき適切に行政権を行使した」と繰り返すだけだった。

 会合後の会見で、質問の意図を問われた代理人の加藤裕弁護士は、「地方自治法の関与の原則」があるとし、「国と地方は対等協力の関係にあって地方自治体の自主性、自立性を尊重しなければならない。国の関与は地方の立場を尊重して最小限にしなければいけない」と述べ、法の定める尊重の原則から外れていることを強調した。

 仲西氏は「なぜ是正の指示までする必要があるのか」と農水相による前例のない判断を疑問視した上で、「是正の指示をすべき緊急性がある状態ではない」と断じた。

 菊池委員長は会見で、追加の書面提出を求めない考えを示し「これまでの議論を踏まえて合議したい」と述べた。

(安里洋輔)