【記者解説】差別や偏見で病歴明かせず 「地域での生きづらさ」解消へ連携が急務 ハンセン病・市町村アンケート


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県宮古福祉事務所が宮古島市で開催したハンセン病に関するパネル展=2020年6月、宮古島市役所

 琉球新報が実施した沖縄県内41市町村へのハンセン病に関するアンケートで8割を超える市町村が、それぞれの自治体内で生活する回復者の実数を把握していないと回答した。回復者の高齢化が進む中で、安心して地域医療や福祉とつながるための土台づくりが進んでいないと言える。

 患者の強制隔離を違憲とした熊本地裁判決(2001年)を受けて国が謝罪し、補償を約束して20年超が経った。回復者は高齢化が進み、後遺症や高齢に伴う疾病などの治療のために必要な療養所への自力通院が困難となってきている。

 ハンセン病回復者の会によると、差別や偏見を恐れて病歴を明かせず、地域の医療機関に頼れずに病状を悪化させたり、同じ理由から行政福祉を利用できずに生活困難に陥る回復者も多い。

 県が22年に設置した県ハンセン病問題解決推進協議会は、回復者らが訴える「地域社会での生きづらさ」の解消を目標の一つに掲げる。

 同協議会は当事者や支援団体、教育、学識関係者など関係各機関から構成されるが現在のところ、市町村担当者は含まれていない。

 回復者らは末梢(まっしょう)神経まひなどさまざまな後遺症からくる不便を抱えながら暮らす。生活に密着した支援を実施するには、当事者に身近な地域行政の協力が必要不可欠だ。

 国・県は市町村を巻き込んだ支援態勢づくりを急ぐ必要がある。アンケートでは9割を超える市町村がハンセン病について学ぶ場への参加の意思を示している。漏れのない支援を実現するために意見交換し、連携強化を図る場所づくりも必須だ。

(佐野真慈)