14世紀ごろ、中国から漆器技術が伝来し、琉球王国時代に沖縄独自の伝統工芸として発展した「琉球漆器」。角萬漆器(那覇市首里)の工房で作業をしていた職人の宇良英明さん(63)はいとこに誘われ、19歳でこの業界に飛び込んだ1人です。仕事は分業制で、宇良さんは器に装飾を施す「加飾」が専門です。この日の作業は「堆錦」。漆に顔料を混ぜてもち状にしたものを薄く伸ばし、模様を切り抜いて立体的に文様を付けていきます。漆が、高温多湿の気候の下で乾燥する特性を生かした沖縄独自の技術です。「漆器にはいろんな技法があるのが魅力。塗り、沈金、箔絵、螺鈿。工房は宝箱の入った建物」と宇良さんは笑顔で語りました。(2023年04月09日付りゅうPON!掲載)
協力・角萬漆器
文と写真 又吉康秀
【加飾】
薄く伸ばした堆錦もちから模様を切り出し、一つ一つ丁寧に文様を施す宇良英明さん。
【漆器材料】
漆器に使用するデイゴやシタマキの木材。何年もかけて乾燥させています。
【漆】
どろどろと乳白色をしている漆。水分を飛ばし、顔料と混ぜて、塗りや加飾に使われます。直接触ると皮膚がかぶれるため、取り扱いには注意が必要です。
【工房】
昨年11月に街が見渡せる工房に移転。作業の様子が見学できます。
【研磨】
漆がしっかり塗れるように、下地を丁寧に研磨していく兼島風希さん。
【細かい作業】
宇良さん自作の棒金(ボーガニー)でゴーヤーの葉の葉脈を表現していきます。
【手作りの道具】
アンテナに用いられる細いパイプやステンレスの棒を加工して作った宇良さんオリジナルの棒金(ボーガニー)。
【完成品】
宇良さんが手がけた、入れ物に立体的な文様を施した沖縄独自の加飾技法「堆錦」。
【店内彩る漆器】
店内に並ぶ艶やかな漆器製品。熟練の職人が手がけ、茶器やお盆、アクセサリーなど種類は多岐にわたります。