絵本のもつ力 廣瀬真喜子(沖縄女子短期大学・児童教育学科教授) <未来へいっぽにほ>


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 沖縄女子短期大学では「絵本カード100冊」という課題があり、その歴史は長い。本学名誉教授の鎌田佐多子先生が始めた取り組みで、絵本の紹介カードを100枚、保育実習までに書き終えるというものだ。学生は大変そうだが、卒業生からは「やって良かった」という声が寄せられている。

 それもそのはず。保育現場で絵本は欠かせない。特に保育園では毎日のように読み聞かせをする。読み聞かせには子どもの言葉の語彙(ごい)を増やし、絵を見て想像力を膨らませ感性を育てるなどの教育的な役割がある。
 読み手の生の声や雰囲気、ひざの上で読んでもらうのであれば体温を通して、情緒的なやりとりがなされ、自分が大切にされていると子どもが感じる養護的な役割もある。本学ではさらに、絵本の歴史や役割などを広める技術をより深く学べるように、国立青少年振興機構が認定している「認定絵本士」の資格をとれる仕組みを整えた。昨年は第一期生を輩出した。彼らは今後、絵本の魅力を大いに伝えてくれるだろう。

 さて梅雨の季節になると思い出す絵本に、「おじさんのかさ」がある。この絵本はおじさんが自分の傘を気に入って気に入りすぎて雨の日でもささずに閉じたままで、ある日、少女が傘にあたる雨粒の音を楽しそうに表現しながら歌うのを聞きやっと傘を開くというお話である。自分の子どもが小さい頃にもよく読んで聞かせた。最近車を購入したのだが、使うのがもったいなくて歩いて買い物に行った。その姿を見た子どもたちに「おばさんのかさだね」と言われて大笑いした。絵本は大人になってもコミュニケーションツールになっている。絵本のなせる技の一つだ。