ジージリジリジリジリ、シャワシャワシャワー。セミの声を聞くと夏が来た!って感じますよね。セミは日本国内に36種類いますが、そのうち半数以上の19種類が沖縄県内にすんでいます。この中には日本で一番大きなヤエヤマクマゼミと一番小さなイワサキクサゼミ、珍しい体の色や美しい鳴き声のセミもいます。沖縄はまさにセミの宝庫なのです。今回は初夏を代表するクロイワニイニイ、真夏によく見るリュウキュウアブラゼミ、晩夏のやんばるで鳴くオオシマゼミを紹介します。姿や鳴き声の特徴を知って、観察してみましょう。
(2020年07月26日付 りゅうPON!)
オオシマゼミ
全長50ミリほどで、頭と胸は濃い緑色に黒い雲状紋があり、腹部背面は鮮やかな青い横線が入ります。最盛期は9~11月。山地のシイ林にすみ、「ケーンケーン」と金属をたたいたような声で鳴きます。
分類:セミ科ツクツクボウシ属
学名:Meimuna oshimensis
方言名:ジェンジェン(大宜味村)、ジェンジェンサー(今帰仁村)など
リュウキュウアブラゼミ
全長55~65ミリの大型のセミで、奄美諸島から沖縄諸島にすみます。体は黒から赤褐色で、羽は不透明な赤褐色です。5~10月まで、「ジージリジリジリ」と一日中、断続的に鳴きます。
分類:セミ科アブラゼミ属
学名:Graptopsaltria bimaculata
方言名:ナービカチカチー、ナービナーク、ナービチリチリーなど
クロイワニイニイ
全長27~32ミリの小型のセミで、羽に褐色の雲状紋があります。主な出現期間は4~11月と長く、奄美大島から沖縄諸島の低地の松林で多く見られます。「チー…」とか細い声で鳴きます。
分類:セミ科ニイニイゼミ属
学名:Platypleura kuroiwae
方言名:マチサーサー、マチジージなど
(写真提供=安座間安史さん)
島ごとに独自の進化
「夏の虫」のイメージが強いセミですが、実は沖縄では夏以外にも活動しています。まだ肌寒い3月初旬にイワサキクサゼミが鳴き始め、4月ごろにはクロイワニイニイ、6月ごろからリュウキュウアブラゼミやクマゼミ、11月ごろまでオオシマゼミの声が聞こえます。真冬の1、2月を除いてほぼ一年中、沖縄県内のどこかの島でセミの声が響いているのです。
多くの昆虫は羽をこすって鳴きますが、セミは羽でおなかをこすって出す摩擦音のほかに、おなかの中の発音筋と発音膜を振動させて音を出します。そして空気が入った共鳴室で音を響かせることで大きな鳴き声を出しています。
また、沖縄のセミの半数は他府県に見られない固有種と沖縄が北限の南方種が占めています。しかも宮古諸島にしかいない種類、八重山諸島のみにすむ種類など島ごとの固有種も多く存在します。これはセミが昆虫の中では体が重く遠距離を飛ぶのが不得意なこと、幼虫が地中で植物の根から汁を吸って成長するため土ごと移動するのが難しいことなど、海を渡って移動できないため、島ごとに進化したと考えられています。
(監修・安座間安史 琉球大学教育学部・教職センター非常勤講師)
<まめ知識>
セミは成虫になると2~3週間で死んでしまいます。そのため、一般に寿命の短い昆虫だと思われています。しかし、幼虫は成虫になるまでに2~7年もの長い期間を地中で過ごしているため、一生で見ると最も長生きする昆虫とされています。アメリカに生息するジュウシチネンゼミの幼虫は、その名の通り17年間も地中で生活します。