夜の砂浜で耳をすますと、カサカサと音がします。さまざまな貝を背負い、歩く姿が魅力的な砂浜の人気者・オカヤドカリです。オカヤドカリは実は陸生。世界中に15種類おり、日本では7種類、そのうち6種類が県内にすんでいます。今回は浜辺でよく見るムラサキオカヤドカリとナキオカヤドカリを紹介します。(2020年08月23日付 りゅうPON)
ムラサキオカヤドカリ
分類:オカヤドカリ科 オカヤドカリ
属 学名:Coenobita purpursus
方言名:アマン、アーマン、アマーム(沖縄島、宮古島)、アーマンツァー(八重山諸島)
成体の体色は名前の通り紫色ですが、幼体は白、薄い青、紫などさまざま。目と体をつなぐ眼柄の下部が薄紫色です。ナキオカヤドカリとよく似ており、小さいときは体色だけで区別することはできません。
ナキオカヤドカリ
分類:オカヤドカリ科 オカヤドカリ
属 学名:Coenobita rugosus
方言名:アマン、アーマン、アマーム(沖縄島、宮古島)、アーマンツァー(八重山諸島)
オカヤドカリ類で最もよく見ることができます。比較的小型で、眼柄の下部に黒い斑紋があります。腹部末端の尾脚を宿貝の内側にこすりつけて「ギッギッギ」と″鳴き”ます。
何でも食べる! 浜辺の掃除屋さん
オカヤドカリはエビやカニと同じ甲殻類の仲間です。海にすむホンヤドカリとよく似た姿をしていますが、ホンヤドカリよりもヤシガニに近いとされています。夜行性で昼間は海岸近くのアダン林などに潜み、夜は餌を探して動き回ります。動物の死体や残飯、植物の葉や実など何でも食べる雑食性で、「浜辺の掃除屋」と呼ばれます。
ヤドカリはその名の通り死んだ巻き貝やアフリカマイマイの殻を背負って暮らします。これを宿貝といいます。宿貝に体をおさめて敵から身を守るだけでなく、貝の中に水を蓄えて呼吸し、乾燥や脱水、熱さを防いでいます。
オカヤドカリは脱皮の度に体が大きくなるため、成長に伴って宿貝を替える必要があります。いいサイズの貝を見つけるとハサミで慎重に大きさを測り、移り住みます。宿貝はいつも不足気味なので仲間同士で取り合いになることもあります。
成体になると海に入らないオカヤドカリですが、6~10月の大潮前後の夜にメスが水際に集まり、貝の中で保護していたふ化直後の幼生を海中に放ちます。幼生は動物プランクトンとして海を漂い、数回の脱皮を経て大人と同じ形になります。上陸前に貝を探して潜り込み、その後は陸上生活を送ります。
陸に上がったばかりのオカヤドカリは5ミリほどの貝におさまる大きさ。死ぬまで成長するので長生きするほど巨大になります。寿命は25~30年と言われています。
(監修・安座間安史 琉球大学教育学部・教職センター非常勤講師)
【見分け方】
オカヤドカリとホンヤドカリの見分け方として、オカヤドカリは片方の第1脚が大きく、第2触角が長いという特徴があります。また、オカヤドカリのメスの腹部には3本の腹肢と呼ばれる毛が生えた突起があります。メスは腹肢で放生まで卵を保護します。
<まめ知識>
沖縄では子どもの遊び相手だったり、釣りの餌としてなじみが深いオカヤドカリですが、実は1970年に国の天然記念物に指定されています。オカヤドカリは日本では南西諸島と小笠原諸島に生息していますが、沖縄が日復帰するまでは小笠原諸島にしかいない“希少種”でした。小笠原諸島での乱獲を危ぶみ、天然記念物に指定されたのですが、1972年の沖縄復帰に伴い、自動的に沖縄県内のオカヤドカリも天然記念物となりました。
沖縄では浜辺で今も日常的に見ることができる生き物ですが、天然記念物なので無断で捕獲することは禁止されています。かわいくて飼育してみたい! と思うかもしれませんが、持ち帰らず浜辺で観察するだけにしましょう。